OjohmbonX

創作のブログです。

0-01-04から1日間の記事一覧

圧力と熱 (4)

目の前をぱらぱら何かが落ちていく。見上げれば父が母の隣で乾いた唇の皮をちょっとずつ剥がしては落としているのだった。一心不乱に剥がしている。母はぎょっとして父を止めるがやめない。 「ちょっとお父さんやめて」 まだ小学校に上がる前か、低学年だっ…

圧力と熱 (3)

終わったけれどこうして二階から母はまた七年経って私を見下ろしている。宣告を下そうとしている。口はすでに言葉のための形を形作っている。 「ああ、」 漏れた嘆息の後にゆっくり 「臭い、臭い」 と母は言った。長い長い細くて長い鈍く鉄色に光る針を一本…

圧力と熱 (2)

八日目、弁当のみならず通学カバンの中もひじきだらけになっていた。これが母の言う大丈夫かと思った。ついに同級生にもこの祝祭を知られた。この日は同級生が手分けして彼らの腹に収めてくれた。 九日目の放課後、私は仲の良い女友達に呼び出され連れられ音…

圧力と熱 (1)

玄関先でただいまと機械的に言うと、おかえりという声は上から降ってきた。妙に華やいだ父の声だったが表情はわからなかった。天井は高いほうが良いと父が造らせた家の、その天窓から傾いた日が金色に差し込んでいる。その日を背負って陰になった父は、吹き…