OjohmbonX

創作のブログです。

エンパイア・オブ・ルンバ

さっきからルンバがおばあちゃんのすねを攻撃してる。ガンガン当たってる。でもおばあちゃんは無言だ。立ったまま。 障子紙を通して強い逆光が和室に差し込んで、戸の透き間から覗くぼくには、おばあちゃんの表情は陰に沈んで伺い知れない。 ふいにおばあち…

ラブ・ラビリンス

あたしの顔を見て、あたしのダーがあたしに 「うるせえ」 とどなった。あたしは去年から一言もしゃべってないのに。 「メーンゴッ」 あたしは2012年に入って最初の言葉をしゃべった。 「うるせえドブス」 ダーはもっと怒ってピスタチオをあたしに投げつけた…

友達にはなれない

あ、この人、すっごく感じのいい人だなあ。 おれはお客さんの額を指で押した。 「いたいです」 「ごめんなさい」 まちがえた。人間にはいいね!ボタンがついてないんだった。もうクセになっちゃってる。 それにしても、石焼きビビンバの注文を50分も放置して…

ライブハウス

レオパレスだから気をつかってすごく小さい声で小フーガト短調を歌っていたら、右隣の部屋から第2声部が続いて聞こえてきた。ふだんお隣のティッシュを抜く音さえ聞こえるんだもの、あちゃー、やっぱ聞こえてたかと思いながらそのまま歌っていると、今度は左…

絶望的な幸福が始まる

妖怪の娘 八十歳はぜったい過ぎてる。なのに妊娠してる。しかも足がぐちゃぐちゃ。どーなってるの? 優先席の権化みたいなおばあさんがこっちに来る。優先席に座ってるぼくの方へ! おばあさんがぼくの前に立った。全身に大量の「おなかに赤ちゃんがいます」…

ロスト・テクノロジー

ああ、君が今あわてて手に取ったスプレーのことで、少し昔話をさせてくれないだろうか。君の時間を一方的に止めて、奪って、まったく何様なのだろう、暴力的なやり方だとわかっているけれど、ぜひ話をさせてくれないだろうか。 佐々木兵衛はすでに息子に家督…

長編のご案内

ちょっと長い創作の文章を3つ↓に載せました。 http://d.hatena.ne.jp/OjohmbonX/00000101/p1 なにかの賞にだしてだめだったやつを載せているので、書いてから少し時間が経っています。まただめになったら載せていこうとおもいます。 インターネットで実利も…

善き羊飼いの子は羊

「ハーイ」 かん高い声を聞いて甚六は、ヘーベルハウスを、意識しないまま心の底で一瞬期待しながら振り返るとしかしそれは、イクラちゃんだった。甚六にはまるで分からない。なぜ、いつから、自分の部屋にイクラちゃんがいるのか。 「チャーン」 さらに振り…

失われた感情を求めて

女子高生・島田わぴょしはマックのバイト。感情は捨ててきたから笑顔はない。スマイル \0? ううん、\∞。 事故やトラウマからじゃない。ただ、中学二年のときにちょっとミステリアスな女を演じてたら、本当に感情を忘れてしまっただけ。ついでに友だちも置い…

つつきつつかれ

白刃をだらりと提げた噂の辻斬りを面前にしてもなお平内は、自身が標的とは露ほども考えなかった。名のある遣い手を選ぶと噂の辻斬りが、まるで剣に疎い自分に用のあるはずもないと信じきっていた。 「抜け」と辻斬りに言われるまま訝しげに刀を抜くに及んで…

戯曲:紳士の優雅な午後の愉しみ

第1幕 [チェーンストアのカフェ。] [紳士が紙コップを店長に突き出している。] 紳士 私はコーヒーに多少鼻くそを入れられたくらいで怒りはしない。実際、今までもこの店では毎回入れられていたのだしね。 店長 まさか! どうして黙っていらしたんですか! 紳…

愛、この永遠の青

君は本当にミイちゃんを愛しているのだろうか。 それはひょっとして君が、青狸などではなく猫型ロボットなのだというアイデンティティを、内外に誇示するための手段に過ぎないのではないだろうか。猫のミイちゃんに欲情する私は猫だと証し立てるための。君の…

手紙 〜拝啓 十五のベジータへ〜

拝啓 この手紙 読んでいるベジータ どこで何をしているのだろう 十五の王子は誰にも話せない 悩みの種があるのだよ 未来の自分に宛てて書く手紙なら きっと素直に打ち明けられるだろう 今 滅ぼして 滅ぼして 消えてしまいそうな星を 見ながら思う 俺は強過ぎ…

呼吸を止めて、一秒

浅黒い少年と青白い少年が中学校で出会った。 公立中学は地域と年齢とで、全く暴力的なやり方をして少年たちを区切って内部に放り込んだから、この二人は出会うことになった。二カ月足らずのうちに少年たちはゆるやかなグループを形成した。二人はもちろん一…

神のモロ見えの手

「神の見えざる手が最近見えるんだ」ってケンチが急に言い出した。「アダム・スミスの」 「なにそれ? 勉強のこと? 俺勉強できないからよく分からない」 ケンチは俺をすごく軽蔑する目で、一瞬だけ見てすぐににっこり笑った。ケンチは頭がよくてやさしいか…

家族愛

「お父さんの洗濯物と一緒にしないでって言ってるじゃん」などと生意気な口をきく娘に向かって、 「初潮を迎えた娘の、臭い下着と一緒に洗われるなど俺の方こそ真っ平だ」と答えたら、娘は泣いてしまった。 妻が音も立てずに私の脇腹にドロップキックをして…

カリスマ美容師への道

「平林さんお願いします」 バックで昼休憩をとっていたら呼び出しが流れた。おかしいな。ぼくはサンドイッチをテーブルにおいて、とにかく店に戻る。急に混んできたのかな。それとも……いや、それはないよな。ぼくに指名がきたなんて、でも…… 店はまったく混…

現代誤訳 鴨長明「方丈記」

エピソード0. マジでバブル。 河とかマジ流れまくりなんだけど。うたかた? みたいなマジでバブル崩壊パネェ。崩壊再生崩壊再生。 知り合いん家も知らねえうちに消えてるし。ダチとか死ぬし。マジバブル。家なくなるしどうせ人間も死ぬし? 無常。それってバ…

おまる上京譚

上京して4年も経つのに全然芸能人を見かけない。東京には芸能人がたくさんいるって言うから上京したのに、騙された。 俺、就職面接で社長にちゃんときいたんだ。 「東京ってビヨンセとかダンカンとかがたくさん歩いてるって聞いたんですけどその辺、大丈夫っ…

G8+1

ジャパンのPMはすぐに変わる。とりわけ今度のMr.ノダは復興までのつなぎという分析結果を、このサミットに出席しているいずれの首脳も得ているはずだ。そのかすかな軽侮が、大統領に復職したMr.プーチンの表情に現れたのだろう。Mr.ノダが話し終えた直後に、…

あらやしき

荒川に2頭目のアザラシが出現し、人々はそれを歓待した。自治体は1頭目のあらちゃん同様、住民票を発行した。 そして3頭目が出現するに至って人々はかすかな違和感を覚え、しかし自治体は一貫性を保たんと住民票を発行した。 結局あらちゃんは大量に発生し、…

春、高楼の鼻の宴

思ったより乾いててびっくりしたから機転をきかせて、鼻水をペニスに塗って彼女に挿入した4日後に、同級生たちは僕のことを「しんべえ」と呼び始めた。どうしてだか、みんなが僕に優しくなった。 きっと彼女は不安になって女友達に「ここだけの話」をして、…

カリフォルニアKAWMON

その老人はアメリカ全土を旅していた。お供に二人の屈強な男を連れて。黒人のボブと白人のロバートである。ボブは四角い顔立ちに似合った堅物の男、ロバートは甘いマスクの優男であった。 彼ら一行は小さな町にたどり着いた。非常に閉鎖的な町であった。その…

バウリンガルも無しに

ネロ 「パトラッシュ! HEY! HEY! YEAH! パトラッシュッ!」 パトラッシュ 「わんわん(うるさいなあ)」 ネロ 「パトラーッシュ! フォーッ!」 パトラッシュ 「わんわん(うるさい……)」 ネロ 「パトラッシュッ! パトラッシュッ! ダルビッシュッ!」 パ…

それは既に一つの革命であり、そしてまだ始まったばかりなのだ

友達に温泉の素を飲ませて遊んでいたら、急にその友達がゲボして、びっくりしちゃった。 と10歳の息子が話すのを聞いて、明子は愕然とした。てっきりDSが流行っているものだとばかり思い込んでいたのに近ごろの子たちって、進んでるわ。私ぜんぜん知らなかっ…

お持ち帰り/お持ち帰られ

合コンでさかなクンみたいな彼女をお持ち帰りしてラッキーと思ってよく見たら、さかなクンだった。なんかハコフグの帽子をかぶってたからおかしいなとは思っていたんだ。そしたらこれだよ。 ずっと「ギョギョー」「キャー」と絶叫するばかりで、何にもしゃべ…

レクイエム

じいちゃんは数カ月前から意識も無いまま管につながれ、そのうえ死期は医者によって不遜にもあらかじめ告げられ、じいちゃんはその宣告された死に合わせるように死んだのだから、その死はぼくらにとって準備されたことだったはずなのに、ばあちゃんは通夜の…

名人伝

「ファミチキをひとつ」 コンビニの店員が顔を上げるといっこく堂がレジの前に立っていた。ちょうど彼が、世界中の腹話術師を相手にバトルを挑み続けては連戦連勝、残すは日本の五月みどりだけかと思われていた季節のことであった。彼は口も動かさず 「ファ…

HIKARU☆源治

おじいさんは、おじいさんなのに、中二病になっちゃって、家族の集まる食卓で急に、おぉおぉおと呻き、左手で右腕を押さえて、戦時中に米軍の弾丸が埋まった右腕には恐るべきパワーが秘められていて、それがついにこの国難の時代に発動する、という設定を想…

諸悪の根源

「なんか、ゴムの木を切ったら白い液が出てきました!! これって何!? 放射能の影響じゃないんですか!?」 「ゴムです」

夏の夜の夢

真夜中と明け方のちょうど中間に、喉元から突き上げるようにして苦しく目覚めて、ほんの今まで体験していた夢もまだ生々しく、放っておけば手放せるものを、そうはできずにマテラッツィは、ひたすら今見た光景を繰り返し繰り返し振り返っているのだった。 彼…

てりまる

夕方の混雑したマクドナルドの店内で女子高校生2人がおしゃべりしている。 「あんたさあ、さんまとしのぶを足して二で割ったみたいじゃない?」 「それって私がイマルに似てるってこと? うれしい!」 「違う。出っ歯のくせにらくらくホン使ってるからだよ」…

伊佐坂家、真のトイレ

「お手洗いを、お借りしたいのだけれど」 ほとんど消えそうに小さな声で、声に見合って身体も小さくしながら申し出たフネを、カルはかすかに笑ったようだった。受容か嘲りかは定かではない微かな笑いはさっと引いてカルはフネをトイレまで案内した。 フネは…

それは重力のせい

「ファッキン グラヴィティ!」 とデブの女が叫んでた。お前が痩せろ。

明子と久美

「スヌーピーの頭は、ちょうどピーナッツのような形をしていますね。さあ、思い切り大きく口をあけて、お手元のスヌーピーの頭を、鼻の方からくわえてください。そして、思い切り吸ってください」 インストラクターの若い女性がそう指示を出すと、私の周りの…

インジェクションうちの犬

学校から帰ってきたらなんか、うちの犬が、四つんばいの猪木と楽しんごの間に挟まれて、闘魂注入とラブ注入されまくってて、キャインキャイン言ってた。 そのあとお母さんがよんだ警察に、猪木と楽しんごは連れていかれて、うちの犬はでも、おかしくなったま…

春はあけぼの

彼は、部下に舐められるなど断じて許し難く耐え難く思ってこれまでひたすら隙の無さを養っていたので、今日から配属される新人に対しても、容赦なく厳しく接しようと決意して、迎え入れた新卒の新入社員は、そもそも極度に緊張していた上、課員全員の前での…

権利のための闘争

やや混み合った電車の中で、若者が携帯電話でずっと大声で話し続けていた。その若者の肩を掴んで無理やり振り向かせたのは草野仁だった。草野さんは面前した若者の両肩を、厚い両手でがっちり掴んでいる。若者は体を揺すぶって抜けようとするがまるで動かな…

ビフォー/アフター

となりの家が、劇的ビフォーアフターされるのをテレビで見ながら、なんということでしょう、旦那さんが小さなお子さんを抱いて、脱衣場のない風呂へ、遠い居間から裸で向かう映像が流れたのだ。全国の視聴者にとってはある一人の、困った家に住む若い男性、…

グッバイ、ゼア・ハムスター

お掃除を終えて晩ご飯の準備の前に少し、ソファに座って朝から動かし続けた身体をいっときだけ休めると途端に、小腹がすいたのでちょっとしたスナック感覚でハムスターを食べていたら、小学校から帰ってきた娘に見られてしまった。 「ママ、それ、わたしのハ…

ご参考

ほかにもひな祭りを題材にした話をむかし書きました。小さなおひなさまが、大きなひなだんの上で大活躍する、心温まるストーリーです。やはり日本の伝統行事って、すごくいいですよね。 「二人並んですまし顔」id:OjohmbonX:20091125

ダメ。ゼッタイ。

「灯りをつけましょ、ぼんぼりに、って言うでしょ。私、ぼんぼりって何だかよく知らないのよ」 桃の節句に私が何気なくつぶやくと、夫は 「これがぼんぼりだよ」 と次の日に本物を買ってきたのだった。 「ああ、すごいわ。これがぼんぼりなのね。さっそく灯…

松任谷由実

なまはげが サンタクロース 本当は サンタクロース プレゼントを かかえて

その後のトイレの神様

トイレには それはそれはキレイな女神様がいるんやで だから毎日キレイにしたら 女神様みたいにべっぴんさんになれるんやで 私にそう教えた祖母が死んだ。私を育ててくれた祖母。 しかし私が今日もトイレを掃除する理由はむしろ、私の趣味が立ちションだから…

23時のパチンコ屋

パブロフの犬のように飼い馴らされた日本人は「蛍の光」を聞くやいなや帰り始める。しかしジョディは違う。無視して居座り続けている。阿吽の呼吸がわからない。それで店長は「蛍の光」の音量を上げていく。耳が壊れるほどの音にジョディは 「ファーーーック…

見た、見ていない/見えていない、見ない

小学生のときに、地域のおじいさんやおばあさんをエアガンで撃つという授業があった。それは体験学習のひとつで、ちゃんと頑丈なおじいさんやおばあさんが選ばれてるから大丈夫だったのに、僕たちは勘違いして、学校の外でも撃つのが流行った。その辺のおじ…

千の風になって

私はお墓になって あなたに降り注ぐ

高校生たちはお金がないからホテルに行けない

夕方の駅のホームで高校生の男女がキスしてた。ディープキスしてた。完全にサカッてる。女は目を半開きにしてよだれを垂らして一心不乱にぐちゅぐちゅしてる。目の焦点も合っていない。男が腰に回した腕でようやく支えられてる。いいなあと思ってじーっと見…

津軽海峡・冬景色

おいしそうなカモメ煮詰め泣いていました あぁああ〜

家族への限りない祝福

テレビの中でカラオケを歌う女子アナたちを、箸を持つ手も止まったまま、阿呆みたいな顔で熱心に見つめ続ける中学生の息子を、憎しみのこもった目つきで見つめ続ける妻を見て、私は、家族っていいものだな、と思った。 振り向いて私のそでを引く妻に、あなた…