OjohmbonX

創作のブログです。

たっくんはいない(6)

 おうちの近所のスーパーでお魚を買って術をカンペキ身につけてお魚捨てたりしないようにおうちでサンマイオロシをいっぱいしてたらお母さんがうれしくなって、これはアジってゆうんだよって教えてくれて、アジってゆうんだ。かたまりになっててお刺しみになるためのお魚のことは私は専門家だからマグロとかわかるけど、こういうタイプのお魚のことは知るよしもなかったから。八月の途中くらいにお盆っていう時期があって、お盆って私きいたことあるけど、八月の途中にあるということが判明して、朝から出てって言われて、スーパーのお魚の領域に朝からいたのは私と主任のパートの女が二人なんだけど、あと男の人が一人で、この人は社員。スーパーの後ろ側にトラックがきて、それは冷たいトラックで、中から白い大きな箱を出してて、どういう箱なんだろうと思ったけど、男の社員が忙しいみたいなふりしてて聞けなかったけど、あとで氷がいっぱい入ってる水槽にいれてて中みはお魚だった。私と主任は冷蔵庫の中からカバンを持ってきて、開けて、中みは昨日私がすっごく切ったお刺しみ、もうパックされてるやつで、私はすごく懐かしい気もちになったけど、そういう気もちが許される世界じゃなくて、私と主任はものすごい早さでパックをお店に並べて、さっき社員の男の人たちがトラックから持ってきたお魚をパックして、値段が書いてあるシールを貼るんだけど、お魚には番号があって、その番号を機械に打つと勝手にそのお魚の名前と値段とバーコードのついたシールが出てくる仕かけになってて、お刺しみになるためのかたまりになってるお魚のパックは私は専門家だからマグロとかわかるけど、こういうお魚の形をしたタイプのお魚の名まえは知るよしもないから、でも、さいきん少しずつ私の知るよしあるお魚もある(アジとか)から、番号とお魚の並んだ表をずっと見てたら、顔とかの表面がねちゃねちゃしてる状態の主任が走ってきて、遅いって私を怒って、シールを貼ってシナダシする係は主任になって、私はお魚を切る係。九時になってお店が開いて、べつにお客さんがいっぱいくるってわけでもないのに、まだ私はお魚をいっぱい切ってて、主任はシナダシしてて、社員はよくわからない、私お魚切ってるから他の人どうしてるとかわからなくて、どんどん切ってて、ピシャーッピシャーッて切れるのがやっぱすっごく楽しくなったり、急に立ってるのがつらくなって、なんでこんなに切らなきゃいけないの、だってお客さんぜんぜんいないのに、何のために切ってるの、昨日私がつくったお刺しみがまだお店に並んでるのに、いつになったら終わるのって思って、こわくなって、足が痛くなって、泣きそうになって、がまんしてたら、鼻水でた。主任がキリはもういいってゆって、私はパックの専門家でトレイに盛りつけたお刺しみや切りみを透明のまくでパックする機械でパックして、それを主任がどんどんシナダシして、いつのまにかお客さんがいっぱいいて、お魚のざんがいもパックして、シナダシして、サンマイオロシもおばあちゃん(これはおばあちゃんなのにすごい大きな生物だった)に頼まれて、アジじゃないお魚だけど、サンマイオロシして、主任が休憩に入っていいって言って、もう一時半だった。休憩の部屋は木のうすい板でかこまれた小さい部屋で、私の冷蔵庫よりももっと小さくて汚い赤い冷蔵庫があって、その上にお弁当が積んであって、私ははじめての休憩だったから、お弁当をじっと見てて、私よりさきに部屋にいてお弁当を食べてた女(たぶんお総菜の係の女)が、お弁当を注文してるんだったら食べていいってことを教えてくれて、昨日、今日は朝から出てって言われたときに、お昼のお弁当いるかってきかれているってゆってて、そのときのいるが、このお弁当になってるんだと思って、一個とってテーブルにおいて、女がお茶はポットのお湯で自由につくっていいこととか、つかったお湯のみは洗って元の場所にふせておくこととか教えてくれて、私は一気にプロになった気がしてうれしくなって、いすが背もたれがなくて緑色で、座って、お弁当を食べはじめたときに、知らない女と二人だけでお話しすることが頭の中から出てこないと思ったけど、女は箱みたいな昔の小さいテレビをずっと見てて、だまってお弁当を食べてるから、私も安心してだまってお弁当を食べた。お店に戻って主任がかわりに休憩に入って、またお刺しみを切ったりしてて、急にレジの女、私より若くて、小さい、小さいっていうのは、私より小さいのは当然だけど、女という生物で熟慮しても小さいという意味だ。女、きて、私に、パックの値段が違うって怒ってきた。私こころあたりある。朝、私が値段の機械でパックにシール貼ってた。切ってないお魚が一匹とか二匹とかそのまま入ってるパックだ。私はアジの見た目にはかなりの自信があるから、アジの番号を打ってアジのシールを貼ったけど、貼りながら、途中からもしかしたらアジじゃないかもしれないって思った。最初はカンペキアジだけど、途中からアジじゃないお魚になってたかもしれない。それでお魚の表を見てて、主任が怒ってきて、シナダシは主任がやることになって、私は朝一度主任に怒られてるのに、昼にまたレジの女に怒られてるのは変じゃないかな? と思った。逆に私が怒ってもいい感じする。でも上手に説明することが難しいから私、黙って、レジの女をすっごい睨んだら、小さい女は、気づいたやつはレジの方で打ち直して、お客さんに謝ったけど、まだお店に残ってるといけないから、見直してってゆっただけで、レジに帰っていった。私お魚のコーナーに並んでるパックのお魚を見たけど、アジって書いてあるとアジに見えるから、間違ってるってことはないって気がしてくるけど、レジの女はちがうってゆってたから、ちがうかもしんないけど、はっきりゆって、わからないのに
「すみません。」
って言われて、おじいさんが、これはけっこう大きいおじいさん、パックを持ってて、
「これはどうやって調理するのがおすすめですか。」って私にゆってて、私はおじいさんのパックを見たら、「サケ(アラ)」ってゆうシールが貼ってあって、それ以上のヒントがないから、
「焼いたりして、食べます。」って言った。
「アラをですか? 焼くというのはグリルで塩焼きにするのですか。」
 グルメっていうのは何のことだろう。きいたことあるけど。私並んでる方のパックのことも気になってるのに、グルメのことも両方考えるのはむずかしい。だから
「待っててください。今は、待っててください。」って言った。
 最初に並んでるパックのこと、アジのことをなんとかする必要ある。それでパックをいっしょうけんめい見てるけど、なんかいろいろ考えてるけど、なにも考えられないみたいになって、もっといっしょうけんめい見てるけど、どんどんわけがわからなくなってくる。急に横から女がでてきて
「味噌ってどこにありますか。」って言う。
 女の方を見て、女は、なんか、もう大きさがよくわかんない、おみそのことをきいてると思って、でも私はアジのことや、あとおじいさんのことが早くなんとかしなくちゃいけないから、
「このお魚はなんですか?」って聞いて、
「え、……なにって……どういうことですか。」って言われて
 間違えた。このお客さんはおみそを探してる人間だった。間違えたと思ったけど、もう聞いちゃってどうしよもないから、
「ここに並んでるお魚の名前を教えてほしいです。」って言った。
「アジって書いてありますけど。」
「シールにアジって書いてあることは私わかってます。字が読めるからです。それで、このお魚がアジですか?」
ってひっしで聞いたら、女が私をこわいみたいな顔して「もういいです。」って言ってどっかへ行って、おみそのことが残って、でもアジのこともあるから、お魚のパックを見ようと思って、反対がわにおじいさんが立ってて、すごいこわい顔して私を見てて
「待ってるんだが。」って言って、うん、私がアジのことをなんとかするまで、おじいさんは待ってることになってるから、私
「そうですね。」って言って、お魚のパックをいっしょうけんめい見てたら、おじいさんが
「お前!」って言った。すっごく大きな声で私はびっくりして、きゅうに力が入らなくなって、おじいさんのほう見てた。
「客を何だと思ってるんだ!」ってまた大きな声で言った。私はびっくりして、何か言わなくちゃいけないってわかってて、おじいさんを見てて、何か言わなくちゃいけないってわかってて、でも、おじいさんを見てて、おじいさんがものすごく怒ってることはわかってて、こんなに大きな声、みんな見てる、お店にいっぱい聞こえてて、恥ずかしい、こわいよ、怒ってる、なにか言わなくちゃ、なにか
 私は主任に引っ張られてて、お魚コーナーの裏にもどされて、私、
「お客さんと、お客さんと、アジのにせものが、レジの人がゆってきて、アラのことと、グルメのことと、おみそのこととか……」
 主任は「大丈夫だから。」って言って、お店に戻っていって、窓の向こうに主任が出てきて、おじいさんに「大変申し訳ありませんでした。」って言った。
 主任がゆっくり深くおじぎしている。おじいさんが主任にどなってる。主任がまたゆっくり深くおじぎしている。主任がおじいさんの持ってたパックを受けとる。主任がなにかていねいに説明してる。おじいさんがそれを聞いてる。主任が別のパックを手に取る。おじいさんに二つのパックを渡す。主任がおじいさんといっしょにお魚コーナーを離れていく。
 主任がレジの方から戻ってくる。たくさん並んだお魚のパックを見る。そこから二つひょいひょいと取り上げて裏に回る。すばやくパックのラップをはがして、新しいラップをかける。機械でシールを貼る。
 私は急にこわくなって主任の顔を見たけどべつに怒ってる顔じゃなかった。主任はお店に入ってパックを並べなおしてる。主任が私のぶんをみんなやってくれたんだってわかってきて私すごくさみしくなって、それから、あたしがひどいって気がした。主任が戻ってきた。
「あたし、馬鹿なんです。わかってます。あたしが馬鹿だってこと。カマモンにもいつも話してます。でも、あたし、ここで労働して、そうじゃなくなった気がしてて、」
「いいのよ。ちょうど次の人もくる時間だから、今日はもうあがっていいよ。」


(つづく)