OjohmbonX

創作のブログです。

たっくんはいない(7)

 おうちでお母さんが「どうだった?」ってきいてきて、私
「忙しかったよ。」って言った。
 ふつうに言った。私どんな顔してるんだろ、と思ったけどお母さんは変な顔しなかったから、ふつうの顔できてたのかもしんない。そうだよ。私夕方がいちばんすごいと思ってたけど朝がもっとすごいもん。私レディス4見てた。お母さんがばんごはんを作ってくれて食べた。そうめんだった。ごはんじゃなくてよかった。ごはんだったらちゃんと食べられなかったかもしれない。なんかお腹が重たい感じして食べられない。あと、ひややっこと、ほうれんそうのおひたし。みんな冷たくて、おいしかった。食べながら、テレビのニュース見てるお母さんに
「サケのアラって、どうやって調理するのがおすすめですか。」って言った。
「はあ? サケのアラは、そうね。煮込んでも焼いても揚げても、割とどんな食べ方しても美味しいじゃない。おみそ汁に入れてもいいし。」
「そうなんだ。」
 カマモンとお話しして、寝た。
 また三時からのお仕事で、お店を八時にあがるときに、毎日、一回くるっとお店を歩いて、牛乳、おみそ、おさとう、たまご、カレー、おせんべい、バナナ、だんだんどこにあるかわかってきて、お水(特に、お魚がいっぱい死んでるお水のところ、氷がいっぱい入ってる)さわるの大変で、手がごりごりになって、指の曲がるところとかが地われを起こして、すごく痛くなってくるってことを、私は入ったばっかりのころよくわかって、でもだんだん平気になったからそれは、私がプロになったからだと思ってたのに、またなってきたから、主任に地われを告訴したら「冬はつらいのよね。」と言ってきて、どういうことってびっくりしたら、主任は寒いときに冷たい水にさわるからひび割れが起こるって言って、きゅうに、警察のおじさんがスーパーにきた。私がスーパーでがんばってるってゆってくれて、おじさんとお仕事のない日に会って、おじさんが見つけたよって言って、それは私が探してた品川のイケメンだよって。マックで、私とおじさんが座ってたテーブルに、あとからきた男の子が品川のイケメンだよって。髪が短くて、黒くて、肌は白くて、とてもきれい、まゆが細くて、体は細いけど、なんていうのかな、やさしいオオカミって感じで、力強さがある、二七歳だって、あのときのイケメンかどうかわからない、少し困ったような顔して、おじさんの隣に座った。イケメンって顔をよく覚えられないから、品川で私の腕をつかんだ人と同じかどうかはわかんない。イケメンすぎる人を見ると頭の中がまっしろになって「なんでこんなところにいるの!?」ってゆうびっくりするけど今してないから、この人のイケメンの度数が品川の人の度数より足りないってことなのか、私が前に一度見たから私がなれてしまったのか、私わかんないじゃん。おじさんは用事があるからって帰って、時空が男の子と私だけになった。私すごく興味ある。
「なにどし?」
「え?」
「えと、えとだよ!」
「うです。」
「うってなに? お魚?」
「うさぎ年です。」
「ヒィヤーッ!!」
 私大声だしちゃった。
「私もうさぎ! 私とキミの年齢はこんなにちがうのにおんなじってどういうこと!? キセキってことが起きたってことでいいってことかな!?」
 二〇一五年になった。このすごい私を披露しようと思ったのに弟の家族はお正月にこなかったからざんねん。就職してスーパーでOLしててキセキのカレシもいる私かがやいてる弟のあの子たち見たらきっとびっくりして私のことすごいってゆう。それをずっと楽しみにしてたのにこなくてがっかりしたけどお正月は一日目がお休みだけど二日目はお店が始まって私も三時から出て、忙しさはでも二〇一四年が終わるときの方が屈指だった。とにかくお刺しみやおすしがいっぱい売れて、私はマッシーンのように切っていった。お魚コーナーの窓からちょっと見てる感じで、さいきんは何が売れてるかなんとなく分かるようになってきたから、少なくなってきたお魚をマッシーンのように切っていって、盛りつけもすばやい。もたもたしてお刺しみがあったまったら鮮度が落ちてだめに決まってるから、私は盛りつけもマッシーンみたいに腕を前後にふって、まな板のお刺しみをつまんでトレイに盛ってを繰り返してると、UFOの気分。たっくんが最高にかがやいてたあのUFOのマッシーンが私の手で、私の脳が私のUFOにすばやく命令してる。あんなおっそいUFOなんかじゃない。私はもっとすごい。それでカレシといっしょにゲーセン行ったときにUFOのゲームがあったから私がミッキーのぬいぐるみがほしいって言った。カレシは二回やって
「これは無理だね。」ってゆって、私は
「そうだよね。」ってゆった。だってミッキーぎっちぎちに埋まってるもん。私の腕についてるUFOならぜったい引っこ抜けるに決まってるけどこのUFOぜんぜん弱いもん。あとプリクラって私やったことないからやってみたいってゆって、カレシは
「だめだよ。」ってゆった。プリクラのところに「男性のみのご利用はご遠慮ください」って書いてあったから私カレシに
「私は女性だよ。」ってゆって、カレシは
「そうだよね。」ってゆった。私は
「んもぅ〜。」ってゆった。なんかすっごいしあわせ。それで人がいっぱいいて並んで歩けなかったから私がカレシのちょっと斜め後ろをついてってたときに、半そでのところからカレシの腕が出てて、私それ見て歩いてた。太いって訳じゃぜんぜんなくて、すじがでてて、すごく力がありそうで、いきなり首をギャッてつかまれたら、私は逃げられない、どんなにじたばたしても完全につかまれてる。もう私たまらなくなって、腕をくみたいなって思って、それがだめでも、あのひじに触ってみたい、もうほんとに胸がキュハキュハになって、どうしよもなくなって、もう私の脳と関係ない感じで私のUFOがゆっくりカレシのひじに近づいていって、キャッチする寸前でカレシのケータイが鳴ってカレシがケータイかまえてカレシのひじは、あとほんのちょっとで逃げてった。カレシのケータイはスマホ、私はスマホってゆうマッシーンのことを知ってる。むかしは主任とあんまりお話ししなかったって今だと思うけど、さいきんは当たり前みたいにけっこうお話ししてて、そういう関係で主任が「私たちにはスマホはむずかしいよね。」ってゆってて私聞いたことある。最新のマッシーンのことだ。主任はケータイとスマホはどっちも電話したりメールしたりするマッシーンだけど違うやつで、私たちにはスマホはむずかしいってことを説明した。アイホンスマホで、ドコモがケータイだっていうこと。でも私は自分のケータイを持ったことがないってゆったら、主任が
「なんで。持てばいいじゃない。」ってゆって私びっくりして
「私できないよ! お母さんにまだ早いって言われてるし。」ってゆったら逆に主任がびっくりして四十歳くらいの女はお母さんと関係なくケータイをケーヤクできるって。ケータイをケーヤクっておもしろーいと思ってゲータゲタ笑ってたら主任がいやな顔をしたからそういうことじゃないってことだ。


(つづく)