OjohmbonX

創作のブログです。

たっくんはいない(12)

 ドラッグストアでいっぱいお化粧品を主任が選んで私それ買った。
「まず洗顔なわけ。熱いお湯は厳禁でぬるま湯でよく泡立てた洗顔料を使って。ごしごし擦らないように。きちんと流して、顔をふくときもタオルで擦らない。それから乳液でほぐして、化粧水で保湿。化粧水はたっぷり使って。ここまででようやく準備ができたわけ。次に化粧下地だけど、指先に乗るくらいだけ出して、両手の指で顔全体にうすく伸ばしてく。これで化粧のノリがよくなって崩れにくくなるから。それでファンデーション。パウダーをパフの半分くらいまでさっさっとつけて、顔の中心から外側にかけて伸ばしてく。くれぐれもたくさんつけちゃだめ。薄く重ねていくのがコツ。ここまでがベースで、眉や目、チークやリップがあるけど、それはいいや。少しずつ覚えてけばいいから。まずはベースメイクをきちんとできるようになって、またうちで教えてあげるから。眉がずいぶん濃いから、次はその辺整えてこうか。」
 主任が高めた私の顔を私は鏡で見てて指の先っぽでちょっと触ってシルクって感じですごくすべすべしててお店でも他の女どもがほめてくれて最近は他の女どもがお話ししてるときに一緒にいるんだけど私がお話するとたまに女どもが困った顔をして少し黙ることがあるから私はあまりお話をせずににこにこしててうれしくて、春らしい色のコスメをそろえてでも甘くなりすぎないように、ベージュでシャープにチークを入れて、うすくピンクも載せて血色感もだしつつ、まぶたや目頭にはゴールドを入れて、アイラインは黒でくっきり引く、リップにもゴールドのきらきらが入ったベージュピンクで統一感を出して、顔ぜんたいの印象を引きしめてエレガント、ネイビーのシルエットがきれいで丈がひざまであるワンピにウェッジのパンプスはベージュのスエードで合わせて、アメジストのネックレスをつけようかなと思ったけど少し大きすぎて合わない気がしたからハートモチーフのシルバーのペンダントをつけて、だいぶ伸びていつも後ろでまとめてた髪をザンジバァールでボブにしてもらって、毛先に内むきのカールを軽くつけてもらってサイドのシルエットはひし型にまとめて、カラーリングはちょっとだけ明るくしてもらったくらい。デートってことでおじさんにお金を借りて、夏らしく白地にビビッドな青と黒の大きな花がらが入ったキャミのマキシワンピはディープスリットがセクシー、つばの大きな白いストローハットをかぶって、アメジストのネックレスをつけようかなと思ったけど少し重厚感が合わない気がしたから、白の革紐のチョーカーをつけて七ヶ月ぶりに会ってカレシが
「びっくりした。」ってゆってくれて二人でプラネタリウムにいった。エレベーターに乗ってるときにパララララってお休みの日の朝に、お布団の中でお外の雨の音をきいてるときみたいな音して私のおならだったけどカレシが「失礼。」って他の人にゆって自分のおならってことにしてくれて私感動して、人がいっぱいいて並んで歩けなかったから私がカレシのちょっと斜め後ろをついてってたときに、半そでのところからカレシの腕が出てて、少し日焼けして小麦色、ヘルシーで力強くて、男性を感じる、あの手をつなぎたいって思った。
「こんでるね。」って私ゆって
「そうだね。」ってカレシがゆう。
「はぐれたら困るから……。」
「大丈夫だよ。ケータイあるしね。最近は便利だね。」
「そうだね。」って私がゆう。手つなぎたい いいわけ……。プラネタリウムは天の川がすっごくきれいで、天の川をどんどん大きくして中に入っていくといっこいっこがお星さまになってるなんてびっくりした。お星さまがいっこいっこ天の川にだんだん集まってきてるってことはよくわかったけど、川っていうことは流れてるわけで、川に葉っぱとかを落とすと流れてくわけだから、お星さまも水に流されてるわけだと思うけど、そのあたりのシステムについての説明はなかったからよくわからなくて、そのかわりひこ星がアルタイルでおり姫がベガっていうお星さまにいるらしくて、あとデブっていう星、これはひこ星とおり姫のラブと関係ない星だけど、その三つで夏の大三角っていうことになってて、それって三角関係ってことだと思うけど、その中を天の川が流れてるってゆうことがわかった。ほんと私さいきんいろんなことわかりすぎてて極上にすごい。おうちでお母さんに三角関係のシステムのこと説明してたらお母さんぜんぜん聞いてなくて
「最近あんたきれいになったよね。」ってゆって、お母さんがすごく嫌そうな顔しててびっくりして、私主任におしゃれのこと教えてもらって、さいきん私じぶんでもおしゃれのことわかるようになってきたってゆったら
「よかったね。」ってゆってお母さんがすごく嫌そうな顔してて私びっくりして目がピカピカしたけどどうしてお母さんが嫌そうな顔したのかはよくわからなかった。主任にファッションを習っててセックスアンドのシティを主任のおうちで見ることになって
「アメリカの映画?」ってきいたら
「ニューヨークだよ。」ってゆうから
「アメリカはニューヨークだよね。」
「そうだよ。」
 リッチミーニューヨークだって思った。でもアメリカの映画は下に出てくる字を読むのが苦手ってゆったら主任も苦手ってゆったけど、最初からみんな日本語でしゃべってたから大丈夫だった。下に字も出てきたけど。映画の人たちがみんなアメリカ人なのに日本語が上手で、何ゆってるかはわかるけど、女がいっぱい出てきて誰が誰なのかがよくわかんなかったし、小さい女の子がよく出てくるけどけっきょく誰の子どもなのかよくわからなかった。でもすごくいい映画だった。主任が
「この映画に出てくるファッションや生き方は本物だから。」ってゆって服のことはすごくチェックしたし、まっ白のウェディングドレスを着た女が乗ってる黒い車と、まっ黒のタキシードを着た男の人が乗ってる黒い車がすれちがって、すれちがうときに女と男の人の目があって、車がとまって、車からおりた女が男に走りよって、泣きながらお花のブーケで男の人をバシバシたたいて、お花がパラパラに散って、女がブーケを男に投げつけて、女が車にもどって、男の人も車にもどって、車がいなくなって、道にお花が残されてて、私これはすごいって思った。さいごにみんながいっしょにご飯たべてて、
「愛は色あせない永遠のブランドだ」ってゆってて、そのとおりだって思った。愛とかブランドは永遠に色あせないってことは私よくわかってる。ずっとおしっこをがまんしてたから主任にトイレのことをきいたらトイレはリビングを出たすぐ左にあるってゆって、リビングを出たすぐ左は階段があって、暗くてけっこう急だからあぶないなって思いながらよちよちのぼってて、すぐのとこのドア開けたらすっごくまぶしくて、
「うわっ」って男の人の声きこえて目がちょっとずつ見えてきて、見たら、高校生くらいの男の子いて私の方が大きい。
「なんですか。」って男の子がゆったから、私
「あ、私わかると思う。私ドア開けてあなたのこと見たの今日はじめてだけど、私あなたのことわかるって気がする。私も昔そうだったから。」ってゆって
「わかるって俺のことがですか。」って男の子ゆって
「そう。あなたかみの毛がぺったりしてるから。私もむかし、たまにしか洗わなくてもいいって思ってた。かわかすのもめんどくさいし。けど、それは違う。毎日のヘアケアが美をつくる。きちんとシャンプーで頭皮をきれいにしたあと、よく泡を落としてから、コンディショナーでかみ全体にうるおいを与える。そしてタオルでよくふいてから、ドライヤーでかわかす。ぬれたままにしておくとすごくかみに悪い。ぬれたまま寝るってゆうのが最強の悪。注意しなきゃいけないのは、洗うときのお湯の温度やドライヤーの温度。あつすぎるとかみが痛む原因になるから。気をつけてね。がんばってね。それで私トイレに行きたいけど、ここはトイレじゃないみたい。」って私ゆった。
「トイレは一階です。」って男の子ゆってトイレが見つかって、リビングに戻ってきて主任に二階の男の子とお話ししたってゆったら主任はびっくりして
「どうして。」ってゆって私もびっくりして
「トイレじゃなかったから。」ってゆってよくわかんないけど、主任は男の子とさいきんずっとしゃべってないみたいなことゆって、高校にも行ってないってゆって
「ずっと部屋にいるのよ。」ってゆって私
「部屋の中だとシャンプーできないですもんね。」ってゆった。


(つづく)