OjohmbonX

創作のブログです。

 一昨日の日記に,月末までもう本は買わない,と書いたにもかかわらず今日本を買ってしまいました.
 阿部和重インディヴィジュアル・プロジェクション」,奥泉光「葦と百合」,島田雅彦「僕は模造人間」,「ドンナ・アンナ」,「天国が降ってくる」,中原昌也「子猫が読む乱暴者日記」を買いました.
 でも大丈夫です.今日はBOOKOFFで購入したので安上がり.
 
 家に帰って中を改めましたところ,島田雅彦の「僕は模造人間」に何かが挟まっていました.何だろうと見てみるとそれは古い葉書でした.昭和61年のお年玉付き年賀葉書です.宛名は

〒101
東京都千代田区一ツ橋2の5の10
集英社週間プレイボーイ編集部
野坂昭如の人生相談係
 差出人は「岐阜市 右大臣実朝」となっていました.そして本文は
私は2年前にある大学を卒業しました.現在は定職には就かず,その日暮し.もっぱら読書だけを心の糧としております.友人達は私について「生活能力無し.」「世間的価値はゼロ.」「廃人の一歩手前.」などと最低の評価をしているようです.それを聞いて私も少々焦ってきました.社会復帰を考えております.その為に何か強力な武器となり得るようなものを身につけたいのですが
 疑問は尽きません.なぜ実朝はここまで書いておきながら出さなかったのか.なぜ年賀葉書なのか.なぜペンネームに「右大臣実朝」なんて衝撃的なダサ名をつけたのか.なぜ「僕は模造人間」なんかに挟んでおいたのか(しかもそれをBOOKOFFに売ったのか)……
 とりあえず実朝は駄目な人のようです.友人が自分を廃人云々と最低の評価をしているようだ,と書いてあったので,直接的な言葉ではなく友人の態度から推察,もしくは実朝の被害妄想か何かかと思っていたのですが,「それを聞いて」なんてあるのでやはり直接言われたのでしょうか.まあ,でも友人達は冗談めかして言ったのかも,と脳内で実朝を弁護してみたのですが,野坂昭如に相談するくらいですからたぶん冗談ではないのでしょう.駄目だわ実朝.
 あ,でも.駄目じゃないよ実朝! 字がすごく綺麗.ま,そこが気持ち悪いんだけどね.
 約20年前には野坂昭如が人生相談をやってる時代があったんですね.僕などはこんな葉書が送られてきたら,
「何か強力な武器? そんなの自分でどうにかしなさいよ.そんなこと人に聞いてるからあんたは駄目なのよ.駄目男! 廃人! 大体ねえ気持ち悪いのよ耳の形が.臭いし.主に耳が」
 なんて実朝を深く傷つけるようなことを言ってしまいそうですが,野坂昭如だったらどう答えてくれるのでしょう.僕の野坂イメージは,たまにテレビに出てくるエロジジィ程度のものですが,20年前の野坂はどうだったのでしょうか.エロ初老男性? とりあえず近いうちに名著の誉れ高い「エロ事師たち」を読もうと思います.(月末以降というか来年に)
 実朝は,今は40代半ばくらいだと思われます.この手元にある葉書が書き損じであり野坂に適切な助言を受けて何か強力な武器のようなものを身につけ,暖かで平和な家庭を築いた40半ば男となっているのか,野坂からも社会からも見放され,独身無職の40半ば男となっているのか,それとも既に何らかの理由で死んでいるのか,そのあたりの実朝ライフは僕には分かりませんし,特に知りたいという気持ちも湧きません.
 この葉書は捨ててしまおうと思ったのですが,せっかくなので取っておくことにします.何がせっかくなのか.今度誰かにあげてしまおう.そして巡り巡って20数年後BOOKOFF島田雅彦の「ロココ町」を買うと中には実朝葉書が……こわー.怖いし気持ち悪い(こわきも).
 
 古本を買って中にこんな葉書が,なんて経験今までになかったのでちょっとはしゃいでしまったのですが,もしかしてよくBOOKOFFを利用する方にとってはこういうことって日常茶飯事なのでしょうか.だったら恥ずかしい.
 もしかしてBOOKOFFではサービスとして客の購入した本にこういう葉書を挟んだりしているのですか.だったら僕はもっと恥ずかしい.