OjohmbonX

創作のブログです。

 フジテレビ系列で放送されているアニメ「サザエさん」のエンディングでは,かつて長谷川町子が新聞に連載していた4コマ漫画「サザエさん」のいくつかが紹介されている.
 今日のエンディングで紹介されたうちの一つに僕は大いに困惑させられた.その内容は(多少の記憶違いはあるかもしれないが)おおよそ以下の通り.

  1. 砂浜で横たわる波平にカツオとワカメが砂をかける
  2. 首以外を砂に覆われ,さらにカツオに胸だけ余計に砂を盛られ,波平はにこやかに「やめなさい,やめなさい」と(音声でなくふきだしで)言う
  3. 帽子をかぶせられ目を除いて布で覆われ,波平は女性に見せかけられる
  4. 勘違いしたマスオがにやけて波平のそばに座り込む
 いかにも「サザエさん」らしく,何の変哲もないというか可もなく不可もなし,といったものだが,実はオチとなる4.には故意に言い落としたところがあり,そこに困惑させられたのだ.故意の言い落としを補足する.
  1. にやけたマスオを,波平は目を見開き睨みつけ
    「このバカ」
    と言う(ふきだしで).
 マスオと波平はお互いに気を遣いながら生活しており,例えば今日放送分(エンディングではなくて本編)ではこんなシーンがあった.
 マスオの勤める会社の近くで午前中に商談が行われることになった波平は,昼食を一緒にとろうとマスオに持ちかける.その際食事代は波平が払うと言う.マスオは快諾し,マスオの会社近くのレストランで食事を始めるが,料理が運ばれる直前,午後の会議が早まるという連絡が入り,波平は食事をせずに店を出てしまう.マスオは仕方なく2人分の料理を食べ,料金を払う.翌日の朝食時,波平はマスオに昨日の食事代として5千円を渡そうとするがマスオは断る.それでも渡そうとする波平と固辞するマスオのやり取りの後,サザエは「家族なんだから気を遣う必要はないのよ」と言う.
 このように,マスオが波平に遠慮するのは当然としても,波平にもまたマスオに対していくらかの遠慮があり,これが波平−マスオの関係だと(僕や作中人物のサザエだけでなく,恐らく「サザエさん」を見たことのある人たちや他の作中人物らも)認識しており,この関係から考えると砂浜では

「マスオ君,わしだよ,わし」と慌てて砂を崩し,帽子と布を取る.
「あ,お父さんでしたか.すいません,全く気づかなくて,すいません,てっきり女性かと」
「いやいや,わしこそ,こんなバカな真似をしてすまんかった」

と,(心の中でどう思っているかはともかく表面的には)このような遠慮した会話が続くと考えられるが,波平の「このバカ」発言には遠慮は欠片も見出されない.
 これまでの波平−マスオ関係の認識を破壊され,僕は大いに困惑することとなったが,来週からどのような新たな波平−マスオ関係が構築されるのかと思うと,楽しくもある.波平のマスオに対する遠慮が失われた一方,マスオの波平に対する遠慮は保持される,具体的には,晩酌をする波平に風呂上りのマスオが気づき「お父さん,僕もいいですか」「いや,マスオ君と酒を飲むのは,わしは勘弁だな」「お父さん,では,僕は,お先に失礼します……」というような関係が望ましい.