OjohmbonX

創作のブログです。

技術大国・ニッポン

 社史上最年長OL、ミキコ(自称ミキプルーン)は居ても立ってもいられなかった。誰かに自分のよろこびを伝えたくて、うずうずしていたのだ。そこでミキコは、いいとも青年隊にいてもおかしくない、というより、いないのがおかしいレベルのイケメン新入社員、まみおかのところへ始業直後に向かった。ミキコとまみおかは部署が異なる上、勤務地も直線距離で20kmほど離れていたが、ミキコは公共交通機関を駆使してまみおかのところへ向かった。ミキコにとって移動は苦にならなかった。なぜならまみおかがイケメンだからだ。
「まみおか君、ミニドラっているでしょう、ドラえもんの道具の、ドラえもんをちっちゃくしたやつ」
「…………」
「ほら!」
 ミキコは、社の制服に標準装備の3次元ポケットから仙台産のこけしをいきおいよく取り出した。
「…………」
「どうしたの、まみおか君、ミニ私なのよ……」
「……ミキプルーン先輩、この際だからはっきり言います。先輩は勤続15年で、ぼくは新入社員だけど、イケメンなので言います。ミニドラは道具なんかじゃありません! 友達だ!」
 ミキコは感激した。自分と面識がないはずのまみおかが、ミキコのことをミキプルーンと呼んだからだ。幼稚園児のころから今まで、周りの人間には牛太夫(うしだゆう)と呼ばれていたのに、初めて自分をミキプルーンと呼んでくれた男、まみおか。
 ミキコはふるえるようなよろこびをかんじた。そしてミキコは、「友達なんだよぉ」と泣きじゃくるまみおかに接して、母性のめばえを感じていた。
 その夜、ミキコとまみおかは一つになった。カラオケ屋の一室で。一つになった二人を見つめていたのは、そばに置かれた仙台産のこけしと、監視カメラ越しの店員一同だけだった。部屋に備え付けの電話がなりひびく。
「お客様、もうしわけありませんが、当店ではそういったご利用はお控えいただきたく……」
 一つの二人は、二つになった。しかし、このとき誰も、カラオケ屋の店員たちでさえも、まみおかがUSBこけしを開発して世界を席巻することを予期できなかったのである。