私の記憶が確かならば……こんなストーリーだったような……
ヤギ似の少年ペーターは、ハイジおじいさんに胸をもみしだかれながら、思った。
「俺はヤギ似なのだから、何としてでもお乳を出さなくてはいけない」
節くれだって弾力のないざらざらしたハイジおじいさんの手で胸をもみしだかれながら、ペーターは、しかしこうも思った。
「もっと、胸じゃないところもさわってくれたらいいのに。首とかわき腹とか太ももの内側とか、それから……」
もちろん、ペーターの願いがかなうことはなかった。なぜならペーターがヤギ似だからだ。
来る日も来る日も誰にも邪魔されず山小屋の中で胸をもみしだき、しだかれていた二人の目の前に、ジオング少女クララが姿を現した。
「脚なんてただの飾りです。偉い人にはそれがわからんのです」
と自主的に言った後、クララはおもむろに車椅子から立ち上がった。奇跡が起きたのだ。
「クーララが立った! クーララが立った!」
そのとき、ペーターの乳首から母乳が噴出しはじめた。クララの奇跡にペーターが感動したから、ペーターにも奇跡が起きたのだ。
さらに、<眠れる獅子>と呼ばれ恐れられていたハイジのI・CHI・MO・TSUが目覚めた。ペーターの奇跡にハイジが興奮したから、ハイジにも奇跡が起きたのだ。
「ハーイジも立った! ハーイジも立った!」
負けじとクララがもっと立ち上がる。すると母乳がもっと出る。そしてI・CHI・MO・TSUがもっと硬くなる。負けじとクララが…………奇跡のスパイラル! トライアングル奇跡!!
1970年代の日本人は例外なくこのアニメに笑い、涙したそうだが、1985年生まれの私には信じがたい。