FNNスーパーニュース

「くそヨシズミっ！」
　気象予報士ヨシズミによる天気予報をテレビで視聴しながら母は憎々しげに吐き捨てた。
「眉毛がむかつくんだよ……死ね！　眉毛にまみれて死んじまえっ！」
　テレビの中でヨシズミのLサイズの眉毛がみるみるうちにXL、XXL……と太くなってゆき、顔が眉毛に覆われたかと思えばたちまちヨシズミの全てが眉毛となった。風が渡った。タンポポの綿毛が散るより軽やかにヨシズミ眉毛は散り散りに四散した。
「イヒィーッ！」
　母がそう叫ぶのを喜んでいるものと思い目を向ければ母は涙を流して悔いていた。
「イヒィーッ！　ヨシズミ、イヒィーッ！」
　名前を書けば人を殺せる「デスノート」がいくらか前に流行った。私の母はデスママンだったようだ。それにしても、涙ばかりか尿までだだ漏れに漏らしてカーペットを汚すのにはとても感心できない。
「そんなに尿を漏らしたいのなら、尿の出しすぎで死ねばいいのに」
　私がつぶやくと間もなく母は噴水のように尿を噴出し、出すに伴い干からびた。母の干物を見つめながら私は自覚した。どうやら私はデス息子らしい。

　あれから5年。四散した眉毛の毛根が大地に根付き育った数万ものヨシズミ（幼体）が農家の人々の手により全国各地へ出荷される様子がFNNスーパーニュースで紹介された。デスメーンキャスター・安藤優子は「イヒィーッ！　ヨシズミ、イヒィーッ！」と涙を流しながら大笑いしていた。