OjohmbonX

創作のブログです。

ある日の放課後における男子高校生二人の会話とその後

「お、お、お、俺さあ、カレーが好きなんだよな」
「あ、ああ、そうなんだ……」
「で、で、で、でさあ、どう思う? 俺がカレー好きだってこと聞いて、お前どう思った?」
「はあっ? 別にいいんじゃないの」
「おぉっっし!! お前に肯定してもらえると、なんか勇気でてくる」
「『肯定』も何も、好きなら好きでいいんじゃない? 俺もカレー好きだし」
「嘘ぉぉぉぉぉ……嘘だろ、お前カレー好きなの? そんなに好きだっけ? なんで好きなら好きって、もっと早く言わないんだよ。本当に好きなの? よぉーく考えてみて。もしかしたら好きじゃないかもしれないから」
「え、や、特別好きってわけじゃなくて、まあ、普通に好きなだけで」
「友達として好きってことか?」
「食べ物としてに決まってるだろ」
「だ、だ、だ、だ、だ、だよなー。ところでこれからカレー食いに行きたいんだけど、一緒に行かない?」
「やだよ、お前キモいもん」
「キモくないよー、ぜんぜんキモくないよー、ちょっとカレーが好きすぎてたまんないだけじゃんか、カレー、一緒にいこうよ」
「嫌だって。お前今日変だよ」
「友達だろぉぅんふぅぅ、応援してくれたっていいじゃないか!」
「お前とカレーの何を応援するんだよ」
「じゃあさ、じゃあさ、ココイチでいいよ」
「ああ、もう、わかったよ……。カレーって気分じゃなかったけど、ま、食べに行こうか」
「え? お前、カレー食うつもりなの?」
「はぁ? 何言ってんの? 食べに行こうって言い出したのはお前だろ」
「いや、一緒に来てとは言ったけど、食うのは俺だけだよ」
「意味がわからん。俺は何しにカレー屋に行くんだよ。『ご注文は?』『あ、俺はいいです。水だけで満足です』意味がわからん」
「いやいやいやいや俺のほうが意味わからんよ。カレーを食べる俺を応援しに来たお前がカレー食べてたら、もうなんか、『本末転倒』じゃんか」
「だーかーらー、カレーを食べるお前を応援する、ってのが意味わからんっつってんの! もういい。俺はマックに行きます」
「見捨てるのか! カレーを一人で食べる勇気を持てずにすがる俺を、友達だろぉぅんふぅぅ、では妥協します。チキンマックナゲットのトロピカレーソースで妥協します」


「トロピカレーソースは期間限定でのご提供でして現在ではお取り扱いしておりませんので、バーベキューかマスタードのいずれかのソースをお選」
「ぼくは怒りましたよ! カレーライスを取り扱っていない時点でほんとはアウトなんです。でも、トロピカレーソースのおかげで、ギリギリセーフあつかいにしてあげてたのに、ああぁああぁぁあぁ、もうこれ、アウトだ。完っ全っにっ、アウトだよぉ」
「カレーを御所望でしたら、ココイチをご利用ください」
「イヒィーッ! 開き直り、イヒィーッ!」
 俺はとても悲しく思った。なぜカレーは人をこれほどまでに狂わせるのか。俺は他人の振りをしてひっそりマックを後にした。そしてココイチで野菜カレー(+フィッシュフライ・2辛・量普通)を独り賞味した。冬が、間近にせまっていた。