OjohmbonX

創作のブログです。

大百科編纂

 春子はOLの身でありながら悪行三昧であった。コピーを頼めばシュレッダー、電話を受ければ「倒産しました」、茶汲みをさせれば鼻くそ入れる、今年で22の若い身空でこの性根の腐れざま、虫の居所の悪いときには仕事を指示する課長部長のまばらな頭髪をむしり取り、あげくの果てには会議室へ用も無いのに押し入って取締役全員の頭をスリッパではたき回す、度しがたい女であった。
 頭をはたかれ回されもはやこれまでと、役会は全会一致でニューヨーク勤務の有能な男を本社に呼び戻し春子の上司と決めた。コロ助部長である。さっそく春子は万丈の気炎をあげ「いずれが上かを知らしめん」と、コロ助部長の頭髪をむしりにかかるものの、コロ助部長の頭髪は頭頂やや後方に500円硬貨ほどの範囲を残してほかになく、その毛は真っ赤な平打紐で高々と巻き上げられた茶筅マゲ、いかに春子と言えども女の力で髪の束を引き抜くことあたわず、22にして初めて敗衄を知る。
 たちまち春子はコロ助部長を尊崇し、素直なこころ、真実のこころで業務に励んだのであった。
「お茶に鼻くそ入れたらだめナリ」
 春子は鼻くその代わりに大便を入れて茶を供した。
「わがはい、コロッケが大好物ナリ」
 春子は鼻くそコロッケを開発した。


 この春子、後の奇天烈斎である。