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OjohmbonX

創作のブログです。

松本引越センター

「きりんさんが好きです、でも……ごめんなさい。やっぱり言えない」
 きりんさんはその夜も悶々としてまんじりともせず夜を明かした。少女の言葉の先が気にかからないはずがない。これまでに少女と交わした会話や少女の表情を記憶にある限りすべて並べ、言い聞かせるように確かめる。
 確かに俺が彼女を愛しているほど、彼女は俺を愛していないに違いない。けれども俺の知る限り、彼女は他の誰をも熱烈に愛してはいない。そして、愛してはいないにせよ、彼女に最も近しいのは俺だ。だったら俺はそれで満足ではないか。きっと彼女は、好きだけれど愛せてはいないことを謝ろうとしていたのだろう。罪ではないというのに。なんと心やさしい少女であることか。


 きりんさんは少女の出演するCMを偶然見かけて愕然とした。
「きりんさんが好きです、でも、ぞうさんの方がもーっと好きです」
 何のためらいもなく言った。誰に訊かれてもいないのに、自ら。
 ぞうさんが好きだというのは仕方が無い。しかしどうして俺と比較する。俺を踏み台にする必要がどこにある。しかも全国放送で。こんな仕打ちが、あっていいのか!
 きりんさんは少女を直接問い詰めた。
「ごめんなさい。首が長すぎるのって、生理的に無理なの。しかも黄と茶のまだら模様が気持ち悪くて……」
 それは、最初から好きではなかったということではないのか。
「ううん、好きです。でも……生理的に無理なの」
 ああぁ、彼女は口ではそう言うものの、俺に好意を持ってなどいないのだ。はなからではないとしても。俺を哀れに思って付き合ってくれていたのだ。
 俺は、彼女をあきらめられるだろうか。俺はそれでも、彼女に執心している!


 しかし、そこはきりんさん。高いところにある葉っぱをむしゃむしゃ食んでいるうちに、そんなことさっぱり忘れてしまった。若いキャピキャピの女きりんとエッチなことして子供ができて今は幸せ。


 一方で悲惨なのは少女の方である。その後ぞうさんの引越業者の商売が繁盛するようにと自主的な支援活動を長年続けてきた。具体的には、干した布団を思い切りリズム良く叩きながら隣人に向けて「引越ーしっ、引越ーしっ、さっさと引越ーしっ、しばくぞっ!!」と絶叫するのである。その結果、奈良県警に傷害容疑で逮捕されるに至ったのである。