OjohmbonX

創作のブログです。

ももたろう

 おじいさんは、おばあさんの話を聞いてただちに思い出すところがあった。
 おじいさんは柴刈りを生業としていたが、ふと思いついて時給に換算してみたところ220円/hだったため転職しようと求人広告に目を通していたら、「男児を桃のオブジェに詰め込んで川上から流すバイト」を見つけたのだった。その場では特に気にしなかったものの――おじいさんは桃関係の仕事は嫌だったし、できれば女児にタッチする仕事がしたかった――おばあさんが、近所のババアを蹴散らしながら川を泳いで桃をゲットしたと誇らしげに話すのを聞いて、あれか、と思い至ったけれど、おじいさんは出来る限りおばあさんに話し掛けたくなかったから黙っていた。
 おばあさんが空気を読まずに、桃をゲットした自分がいかに素晴らしいババアであるかを熱心に語り続けておじいさんをうんざりさせていると、桃のオブジェから自主的に男児が出てきた。
「ぼく、ももたろうだよー」
 おじいさんは男児(自称ももたろう)の顔と股間にちらりと目をやって、男の子もいいなあ、と思った。タッチしたいなあと思った。
 一方でおばあさんはこう言った。
「確かにお前は人間のように見えるが、桃から出てきたということは、むしろ人間ではなく桃と考えるのが道理である」
 ためらわず男児を解体・調理しようとしたおばあさんは男児に「鬼」と認定されたためすみやかに成敗――具体的には射殺――されてしまった。その後、ももたろうは逮捕され、おじいさんには保険金が下り、かえって丸く収まった感じで良かったと思う。