OjohmbonX

創作のブログです。

テレビ界の裏事情

 いうこときかないダメ犬をプロがしつけ直すテレビ番組を担当することになり3ヶ月後に様子を見に行ったらダメ犬のままだった。相変わらず飼い主はボロ雑巾のようにゴールデンレトリバーに引きずりまわされていた。俺は部下に、よくしつけられた別のゴールデンレトリバーを連れてくるよう言った。しかし部下は青臭い頑固なやつだった。
「そんな……ヤラセじゃないですか! 俺、お茶の間のみなさんに真実と感動をお届けするためにテレビ局に入社したっていうのに、こんなのひどいや! いやんいやん!」
「いいや、これは演出だ」
「演……出?」
「そうだ、これは演出だ」
「! そっか、演出か! じゃあ大丈夫かもしれない! 俺、探してくるッス!」
 しばらくして部下は泣きそうな顔で戻ってきた。似た犬をすぐに見つけられないという。
「視聴者なんて馬鹿なんだから、多少似てなくても大丈夫だ」
「そう言うと思って、もう用意してあるッス!」
 部下はニコーッと笑って得意げに俺の前にゴールデンレトリバーの代わりだと言ってしわくちゃで小さく和装の上品な老婆を連れてきた。木下梅子、89歳。大正生まれで奉公の経験がありしつけは完璧だ。我々はカメラを回した。
「ペディちゃん、待て!」
「ええ、ええ、奥様、わたくしいつまでもお待ちいたしますよ」
「オオゥ、グッボーイ、グッボーイ」
「あら、あら、奥様、おやめください、わたくしのあごをたぷたぷ触られては、白粉がお手についてしまいますよ」
 放送したけどあんまりバレなかったので良かった。梅子はブレイクした。しかし一難去ってまた一難、今度は梅子がプロデューサーである俺と寝たから仕事を得られたのだと根も葉もない噂が立った。まさか! 俺があんなババアとだなんて! ま、ゴールデンレトリバーとはエッチしたけどしょうがないよね。