OjohmbonX

創作のブログです。

日本の未来は彼らの双肩に

 彼は童貞であるのに猥談に巻き込まれた。不運にも彼は――それは彼自身の所為には違いないが――自分を貶めて笑いを誘う術を持たない男子大学生だった。女との情事について話しを振られた彼はとっさにこう返した。
「女なんて、マインスイーパみたいなもんだよ」
 同級生たちは一瞬唖然として静まり返った直後、爆笑した。彼は顔を真っ赤にして言葉を連ねた。
「女なんて地雷を踏まないようにクリックするだけだ、初級の女なら3秒、中級の女なら20秒、上級の女なら80秒だ」
 さらに笑いを増す彼らは、嘘だろう、とか、童貞じゃないの、とか口々に囃し立てた。彼はほとんど涙目になって手近な男の同級生のTシャツをめくり、その乳首をクリックした。
「あひぃっ!」
 彼は執拗に乳首をクリックした。
「やめろ、そこは俺の地雷だ、お前はもうゲームオーバーだ! やめろ、あひぃん!」
「やめない……何度負けても……ベストタイムをめざして……何度でも……俺は……あきらめない……!」
 散々乳首を弄ばれ、全身の力が抜け口も目も、腰も四肢もしまりを失い弛緩し切っている。彼は同級生のズボンに手を突き込み、素早く中身を掴んだ。
「何だこれは、何だ、言ってみろ!」
「ああ、やめてくれ、それは俺の3Dピンボールだ」
「何に付属している!」
「ウィンドウズに、標準でついてくる、ピンボールだよ」
「すなわちお前は何だ」
「ウィンドウズだよ、俺はつまりウィンドウズなんだよ」
「じゃあこっちは何だ」
「ぎゃっ、わからない、わからないよ、こんな棒、ウィンドウズについてないからっ」
「ならばお前は何だ」
「わからない、ああ、わからないんだ、俺が、俺たちが何なのか!」


 講義を止めてその様子を呆然と眺めていた教授は額を手で覆いながら「お前たちは、学生だろ」と呻くように呟いた。