OjohmbonX

創作のブログです。

サルゲッチュ

 ミツバチはスズメバチより小さく、弱い。しかしそれは一匹を比べた話だ。巣を襲われたミツバチたちは集団でスズメバチに覆い被さる。そして全員で体を激しく震わせる。熱への耐性――生命を維持し得る温度がスズメバチより高いことを利用し、彼らは熱で殺すのだ。


 猿が動物園から街へ逃げ出したと知って、園児たちは狂喜した。園児たちは幼稚園から街へ逃げ出した。
 猿を捕獲しようと狙う警察官に、園児らは飛びついた。数限り無い園児が次々に警察官へ飛びついてゆく。はじめは拳銃で園児を打ち殺していたがすぐに弾は尽きた。毒針がいかに強力であろうと圧倒的な数の前には無力だった。園児たちは体を激しく震わせ始めた。残念ながら人の死ぬ温度は園児も警官もさして変わらず、園児も多数の犠牲を払った。が、なにせ無数にいるのだ。
 大人の腰の高さ程もない園児たちが道を覆い尽くす。黒い頭が流体のごとく道を流れてゆく。妨げとなるものを次々に飲み込んでゆく。そして身を震わせ熱し殺す。


 そして園児はついに猿をつらまえた。屋根の上で、猿のしっぽを掴んでびたーんびたーんと叩きつけた。きゃっきゃきゃっきゃ笑って。追いついた若い女の先生がその園児の足首を掴んでびたーんびたーんってした。テレビで全国に中継された。猿も園児も死んだ。
 すごく画期的な教育法としてエチカの鏡に取り上げられた。