OjohmbonX

創作のブログです。

0-01-01から1年間の記事一覧

たっくんはいない(16)

もう私のおうちじゃないんだって。うちのものみんな積んでトラックどっかいった。しょうがないからお散歩しててみんな私みてくる。私のマックス魅力にびっくりしてる。ジーパンにTシャツの人たちが、私のエレガンス見てドギモむかれてるってかんじ。風にな…

たっくんはいない(15)

それで私、ゴルディでおじさんに会って、 「お金を集めたかったけど、三百万円はむずかしいみたい。それで、おじさんに、借りようかなって思って……。」ってゆった。でもおじさんはまたかなしそうな顔して、それはできないよってゆった。おじさんに返す三百万…

たっくんはいない(14)

カレシにカップルの写真をメールしようと思ったのに、メールできなかった。今日はドコモがお休みの日かもしれないって思ったけど次の日もお休みだった。お母さんが 「あんたケータイなんて持ってたの。」って急に怒ってきて、お母さんがドコモの手紙を持って…

たっくんはいない(13)

おじさんにお金を借りようとしたら、おじさんが十二個の英語とか数字が並んでるやつがいるってゆって、よくわからなくてメモしてもらったのが「登記識別情報通知」っていうやつで、その紙に十二個の字が書いてあるってゆうことで、だいじな紙だからだいじな…

たっくんはいない(12)

ドラッグストアでいっぱいお化粧品を主任が選んで私それ買った。 「まず洗顔なわけ。熱いお湯は厳禁でぬるま湯でよく泡立てた洗顔料を使って。ごしごし擦らないように。きちんと流して、顔をふくときもタオルで擦らない。それから乳液でほぐして、化粧水で保…

たっくんはいない(11)

すごい女になってきたっていう実感ある。 「お昼になったから、簡単だけどご飯用意するね。」って主任がゆって、天ぷらがのったあったかいおそばと、ハクサイのお漬ものが出てきた。先に食べてていいって主任は天ぷらのおそばとお漬ものと、から揚げと小さい…

たっくんはいない(10)

ショートケーキとショートカットの間にあるきずなみたいなものの正体は私わからないけど、ショートカットのことは思い当たるふしある。弟の子の兄弟がディーエスやってるの私よこから見てて、マリオとかルイージとかが車椅子のすごいやつで走ってるゲームで…

たっくんはいない(9)

送別会にでるって聞かれて、送別会がどういうことかというと、スーパーの人がやめるから居酒屋でスーパーの人が集まるってことでぜんぜんわけがわからなくて小学校のときに転校してく子がいると学活の時間にクラスのみんなでフルーツバスケットとかしてたこ…

たっくんはいない(8)

ドコモっていうのはお店のことで、日本にたくさんあって、ドコモに行くとケータイがケーヤクできる。だが? ドコモはケータイのことだが、ドコモはお店のことだってゆう?? しかもドコモはケーヤクもする?? 私は主任にかなり聞いた。だけどシナダシを急が…

たっくんはいない(7)

おうちでお母さんが「どうだった?」ってきいてきて、私 「忙しかったよ。」って言った。 ふつうに言った。私どんな顔してるんだろ、と思ったけどお母さんは変な顔しなかったから、ふつうの顔できてたのかもしんない。そうだよ。私夕方がいちばんすごいと思…

たっくんはいない(6)

おうちの近所のスーパーでお魚を買って術をカンペキ身につけてお魚捨てたりしないようにおうちでサンマイオロシをいっぱいしてたらお母さんがうれしくなって、これはアジってゆうんだよって教えてくれて、アジってゆうんだ。かたまりになっててお刺しみにな…

たっくんはいない(5)

2013年9月 〜 2013年12月 CanCam(読モ) 読モに応募してたのに十二月に出てきたCanCamにあたし載ってなかった。美容室に行けなかったからだ。二〇一四年になった。あたしは電卓で計算した。一九七五、引く、二〇一四、わ、マイナス…

たっくんはいない(4)

お母さんおそいな。卵をいっぱい食べたのがおとといで、それからずっといない。おさいふをリュックに入れた。このリュックはお母さんが買ってくれたやつでセンスがいいから気に入ってる。のんちーのリュックで、のんちーって現代だとピカチュウみたいな感じ…

たっくんはいない(3)

「ゴブラン、花柄、ドット。全身モノトーン、ジャカード、コーデにパンチ。前リボン、前リボン、フェミニンなリボンは取り外し可能。」 あたし声にだして読む。そうしてると、心があったかくなってくる。あたしの中に入ってくるっていう感じ。そんな気持ちが…

たっくんはいない(2)

それで二〇一三年になった。お正月に弟の一家がきた。弟と、弟のおよめさんと、弟の息子が二人で一家になってる。あたしはこの人たち好き。みんな優しい。およめさんは小柄でかわいい。かわいいのときれいが完璧に合体してる。いつもにこにこしてて怒ったと…

たっくんはいない(1)

あのね、あたし 「すっごい奇跡。だね。宇宙であたしとたっくんが出会ったのって、すっごぃ奇跡。ね、たっくん。ね。たっくん? たっくん? やだ、息してない……」 そしてあたしはたっくんの骨壷をだいてエジプトに旅立った。たっくんは息してるときにエジプ…

他愛なく無用である (9)

また春と呼べる程度に寒さも和らいだから日があたる縁側に腰掛けて庭を眺めていた。頼んだ覚えはないがよく手入れされていると気づいた。四十年暮らして今更に知った。風に誘われて家の奥から孫娘が一人やってきてふいに私の背に体をもたせかけた。私は体を…

他愛なく無用である (8)

私は自伝『希望と絆』をいんちき出版社から出して稼いだ小金を元手に自分でも何だかよく分からない仕事を興して成功した。ちょうど世界中で最後の悪あがきが始まった時代だったから、その中にあって金儲けはずいぶん容易いことだった。やろうと思うかどうか…

他愛なく無用である (7)

その日からリハビリが始まった。吉岡はほとんど毎日やって来ては具体的なアドヴァイスも無しに大声で叫んでいた。「集中しろ、集中しろ!」「どうした、涙は明日の糧になるんだ」「無理やり元の手足に似せようとするからかえって、それが似ていないという印…

他愛なく無用である (6)

珍しく夜中に男子大学生とその馬面の恋人が部屋にいた。私をうすい紫のシーツで包んで外に運び出した。頭と顔もつつまれていた私は、振動と音だけで外を見ていた。エレベーターを降り車の後部座席に寝かせられた。エンジンもかけずに運転席と助手席で二人が…

他愛なく無用である (5)

「あの、こんな感じですけど」 また夜だった。寝ていたとも思われない。もし私が眠っていればこの男は気兼ねして起こしにかかれはしない。いつも通り話し掛けてきたところを見ると私は起きているように見えたのだろうがまるで記憶がなかった。女はもう部屋に…

他愛なく無用である (4)

夕方になって男は出掛けていった。部屋は暗くなっていくがモデムやらテレビやらのLEDの明かりのせいで暗さに沈みきりはせず、自分が目を開けているかいないかを知ることはできた。夜遅くに男は帰宅し、いつも通り奇怪な流動食を私の口に流し込み、水とおむつ…

他愛なく無用である (3)

それからブログのコメント欄で名もなきじじいと争っていたことを脈絡もなく思い出していた。これは進行中だったが今まですっかり忘れていた。名もなきじじいは、ある戦争映画を詰まらないと判断した私の他愛ない記事について反論していた。私はその物語の組…

他愛なく無用である (2)

熱い、と思ったが痛みだった。背中一面が筋肉痛を数段踏み越えたような痛みだったが、四肢は痛みというよりやはり熱かった。上手く息ができない。口を何かが満たしていて呼吸がままならなかったがすぐに外された。外されたのは猿轡状の布だった。視界と音が…

他愛なく無用である (1)

五十七分。あと三分。いまさら何かを始める時間ではない。しかし手を休めて放心するわけにはいかない。同僚達が見ていないようで見ている空間なのだ。というより正確には、同僚達が見ていないようで見ていると私が見ている空間なので実のところ、同僚達とは…

掛け値なしの嘘 (7)

跳べ、跳べと叫び続けていた。夏の江ノ島へ続く道のただ中なのだ、人通りも少なくはなく人々は叫ぶ男を避けて通る。立ち止まって何事かと見る者も、店の中から表へ出て露骨に迷惑そうな顔をする者もいる。蛙は緩慢な動きで振り返りもせずに私達から遠ざかる…

掛け値なしの嘘 (6)

テレビのチャンネルが普段と変わらないと、あんまり旅行したっていう実感が沸かないねえとややババ染みた口調でベッドの上を転がりながら万丈一久は言った。下着をつけたかは不明だがガウンの腰紐は結わいている。 テレビを消し、メインの照明も消してベッド…

掛け値なしの嘘 (5)

シーサイドライン、京急、JRと乗り継いで江ノ電の七里ケ浜で降りた。江ノ電では乗客が幾人か窓の外へ捨てられた程度で、とりたてて妙なこともなかった。 駅から海岸へ下りる道もあったが、もはや海は暗く奥の底も見当たらないので通り過ぎ、坂を上ってホテ…

掛け値なしの嘘 (4)

二人とも平気な顔をしながらその実浮足立っていたとみえ、起きていたのに一駅乗り過ごしてしまった。万丈一久は目に見えて不機嫌になっていた。乗り過ごした先で、下りの列車へ移る前に私はしばらく前からかすかに感じていた腹痛に用心して便所へ行った。そ…

掛け値なしの嘘 (3)

万丈一久は熱心な分析を語り終えて一息もつかないうちに、しりとりをしようと提案してきた。でも俺たちもう二十五歳じゃん普通にしりとりするんじゃなくて簡単な解説を付け加えるの。しりとりの、リ、俺からまずお手本。リャマ。アフリカに住むシカ。え、リ…