OjohmbonX

創作のブログです。

2011-01-01から1年間の記事一覧

家族愛

「お父さんの洗濯物と一緒にしないでって言ってるじゃん」などと生意気な口をきく娘に向かって、 「初潮を迎えた娘の、臭い下着と一緒に洗われるなど俺の方こそ真っ平だ」と答えたら、娘は泣いてしまった。 妻が音も立てずに私の脇腹にドロップキックをして…

カリスマ美容師への道

「平林さんお願いします」 バックで昼休憩をとっていたら呼び出しが流れた。おかしいな。ぼくはサンドイッチをテーブルにおいて、とにかく店に戻る。急に混んできたのかな。それとも……いや、それはないよな。ぼくに指名がきたなんて、でも…… 店はまったく混…

現代誤訳 鴨長明「方丈記」

エピソード0. マジでバブル。 河とかマジ流れまくりなんだけど。うたかた? みたいなマジでバブル崩壊パネェ。崩壊再生崩壊再生。 知り合いん家も知らねえうちに消えてるし。ダチとか死ぬし。マジバブル。家なくなるしどうせ人間も死ぬし? 無常。それってバ…

おまる上京譚

上京して4年も経つのに全然芸能人を見かけない。東京には芸能人がたくさんいるって言うから上京したのに、騙された。 俺、就職面接で社長にちゃんときいたんだ。 「東京ってビヨンセとかダンカンとかがたくさん歩いてるって聞いたんですけどその辺、大丈夫っ…

G8+1

ジャパンのPMはすぐに変わる。とりわけ今度のMr.ノダは復興までのつなぎという分析結果を、このサミットに出席しているいずれの首脳も得ているはずだ。そのかすかな軽侮が、大統領に復職したMr.プーチンの表情に現れたのだろう。Mr.ノダが話し終えた直後に、…

あらやしき

荒川に2頭目のアザラシが出現し、人々はそれを歓待した。自治体は1頭目のあらちゃん同様、住民票を発行した。 そして3頭目が出現するに至って人々はかすかな違和感を覚え、しかし自治体は一貫性を保たんと住民票を発行した。 結局あらちゃんは大量に発生し、…

春、高楼の鼻の宴

思ったより乾いててびっくりしたから機転をきかせて、鼻水をペニスに塗って彼女に挿入した4日後に、同級生たちは僕のことを「しんべえ」と呼び始めた。どうしてだか、みんなが僕に優しくなった。 きっと彼女は不安になって女友達に「ここだけの話」をして、…

カリフォルニアKAWMON

その老人はアメリカ全土を旅していた。お供に二人の屈強な男を連れて。黒人のボブと白人のロバートである。ボブは四角い顔立ちに似合った堅物の男、ロバートは甘いマスクの優男であった。 彼ら一行は小さな町にたどり着いた。非常に閉鎖的な町であった。その…

バウリンガルも無しに

ネロ 「パトラッシュ! HEY! HEY! YEAH! パトラッシュッ!」 パトラッシュ 「わんわん(うるさいなあ)」 ネロ 「パトラーッシュ! フォーッ!」 パトラッシュ 「わんわん(うるさい……)」 ネロ 「パトラッシュッ! パトラッシュッ! ダルビッシュッ!」 パ…

それは既に一つの革命であり、そしてまだ始まったばかりなのだ

友達に温泉の素を飲ませて遊んでいたら、急にその友達がゲボして、びっくりしちゃった。 と10歳の息子が話すのを聞いて、明子は愕然とした。てっきりDSが流行っているものだとばかり思い込んでいたのに近ごろの子たちって、進んでるわ。私ぜんぜん知らなかっ…

お持ち帰り/お持ち帰られ

合コンでさかなクンみたいな彼女をお持ち帰りしてラッキーと思ってよく見たら、さかなクンだった。なんかハコフグの帽子をかぶってたからおかしいなとは思っていたんだ。そしたらこれだよ。 ずっと「ギョギョー」「キャー」と絶叫するばかりで、何にもしゃべ…

レクイエム

じいちゃんは数カ月前から意識も無いまま管につながれ、そのうえ死期は医者によって不遜にもあらかじめ告げられ、じいちゃんはその宣告された死に合わせるように死んだのだから、その死はぼくらにとって準備されたことだったはずなのに、ばあちゃんは通夜の…

名人伝

「ファミチキをひとつ」 コンビニの店員が顔を上げるといっこく堂がレジの前に立っていた。ちょうど彼が、世界中の腹話術師を相手にバトルを挑み続けては連戦連勝、残すは日本の五月みどりだけかと思われていた季節のことであった。彼は口も動かさず 「ファ…

HIKARU☆源治

おじいさんは、おじいさんなのに、中二病になっちゃって、家族の集まる食卓で急に、おぉおぉおと呻き、左手で右腕を押さえて、戦時中に米軍の弾丸が埋まった右腕には恐るべきパワーが秘められていて、それがついにこの国難の時代に発動する、という設定を想…

諸悪の根源

「なんか、ゴムの木を切ったら白い液が出てきました!! これって何!? 放射能の影響じゃないんですか!?」 「ゴムです」

夏の夜の夢

真夜中と明け方のちょうど中間に、喉元から突き上げるようにして苦しく目覚めて、ほんの今まで体験していた夢もまだ生々しく、放っておけば手放せるものを、そうはできずにマテラッツィは、ひたすら今見た光景を繰り返し繰り返し振り返っているのだった。 彼…

てりまる

夕方の混雑したマクドナルドの店内で女子高校生2人がおしゃべりしている。 「あんたさあ、さんまとしのぶを足して二で割ったみたいじゃない?」 「それって私がイマルに似てるってこと? うれしい!」 「違う。出っ歯のくせにらくらくホン使ってるからだよ」…

伊佐坂家、真のトイレ

「お手洗いを、お借りしたいのだけれど」 ほとんど消えそうに小さな声で、声に見合って身体も小さくしながら申し出たフネを、カルはかすかに笑ったようだった。受容か嘲りかは定かではない微かな笑いはさっと引いてカルはフネをトイレまで案内した。 フネは…

それは重力のせい

「ファッキン グラヴィティ!」 とデブの女が叫んでた。お前が痩せろ。

明子と久美

「スヌーピーの頭は、ちょうどピーナッツのような形をしていますね。さあ、思い切り大きく口をあけて、お手元のスヌーピーの頭を、鼻の方からくわえてください。そして、思い切り吸ってください」 インストラクターの若い女性がそう指示を出すと、私の周りの…

インジェクションうちの犬

学校から帰ってきたらなんか、うちの犬が、四つんばいの猪木と楽しんごの間に挟まれて、闘魂注入とラブ注入されまくってて、キャインキャイン言ってた。 そのあとお母さんがよんだ警察に、猪木と楽しんごは連れていかれて、うちの犬はでも、おかしくなったま…

春はあけぼの

彼は、部下に舐められるなど断じて許し難く耐え難く思ってこれまでひたすら隙の無さを養っていたので、今日から配属される新人に対しても、容赦なく厳しく接しようと決意して、迎え入れた新卒の新入社員は、そもそも極度に緊張していた上、課員全員の前での…

権利のための闘争

やや混み合った電車の中で、若者が携帯電話でずっと大声で話し続けていた。その若者の肩を掴んで無理やり振り向かせたのは草野仁だった。草野さんは面前した若者の両肩を、厚い両手でがっちり掴んでいる。若者は体を揺すぶって抜けようとするがまるで動かな…

ビフォー/アフター

となりの家が、劇的ビフォーアフターされるのをテレビで見ながら、なんということでしょう、旦那さんが小さなお子さんを抱いて、脱衣場のない風呂へ、遠い居間から裸で向かう映像が流れたのだ。全国の視聴者にとってはある一人の、困った家に住む若い男性、…

グッバイ、ゼア・ハムスター

お掃除を終えて晩ご飯の準備の前に少し、ソファに座って朝から動かし続けた身体をいっときだけ休めると途端に、小腹がすいたのでちょっとしたスナック感覚でハムスターを食べていたら、小学校から帰ってきた娘に見られてしまった。 「ママ、それ、わたしのハ…

ご参考

ほかにもひな祭りを題材にした話をむかし書きました。小さなおひなさまが、大きなひなだんの上で大活躍する、心温まるストーリーです。やはり日本の伝統行事って、すごくいいですよね。 「二人並んですまし顔」id:OjohmbonX:20091125

ダメ。ゼッタイ。

「灯りをつけましょ、ぼんぼりに、って言うでしょ。私、ぼんぼりって何だかよく知らないのよ」 桃の節句に私が何気なくつぶやくと、夫は 「これがぼんぼりだよ」 と次の日に本物を買ってきたのだった。 「ああ、すごいわ。これがぼんぼりなのね。さっそく灯…

松任谷由実

なまはげが サンタクロース 本当は サンタクロース プレゼントを かかえて

その後のトイレの神様

トイレには それはそれはキレイな女神様がいるんやで だから毎日キレイにしたら 女神様みたいにべっぴんさんになれるんやで 私にそう教えた祖母が死んだ。私を育ててくれた祖母。 しかし私が今日もトイレを掃除する理由はむしろ、私の趣味が立ちションだから…

23時のパチンコ屋

パブロフの犬のように飼い馴らされた日本人は「蛍の光」を聞くやいなや帰り始める。しかしジョディは違う。無視して居座り続けている。阿吽の呼吸がわからない。それで店長は「蛍の光」の音量を上げていく。耳が壊れるほどの音にジョディは 「ファーーーック…