OjohmbonX

創作のブログです。

てりまる

夕方の混雑したマクドナルドの店内で女子高校生2人がおしゃべりしている。 「あんたさあ、さんまとしのぶを足して二で割ったみたいじゃない?」 「それって私がイマルに似てるってこと? うれしい!」 「違う。出っ歯のくせにらくらくホン使ってるからだよ」…

伊佐坂家、真のトイレ

「お手洗いを、お借りしたいのだけれど」 ほとんど消えそうに小さな声で、声に見合って身体も小さくしながら申し出たフネを、カルはかすかに笑ったようだった。受容か嘲りかは定かではない微かな笑いはさっと引いてカルはフネをトイレまで案内した。 フネは…

それは重力のせい

「ファッキン グラヴィティ!」 とデブの女が叫んでた。お前が痩せろ。

明子と久美

「スヌーピーの頭は、ちょうどピーナッツのような形をしていますね。さあ、思い切り大きく口をあけて、お手元のスヌーピーの頭を、鼻の方からくわえてください。そして、思い切り吸ってください」 インストラクターの若い女性がそう指示を出すと、私の周りの…

インジェクションうちの犬

学校から帰ってきたらなんか、うちの犬が、四つんばいの猪木と楽しんごの間に挟まれて、闘魂注入とラブ注入されまくってて、キャインキャイン言ってた。 そのあとお母さんがよんだ警察に、猪木と楽しんごは連れていかれて、うちの犬はでも、おかしくなったま…

春はあけぼの

彼は、部下に舐められるなど断じて許し難く耐え難く思ってこれまでひたすら隙の無さを養っていたので、今日から配属される新人に対しても、容赦なく厳しく接しようと決意して、迎え入れた新卒の新入社員は、そもそも極度に緊張していた上、課員全員の前での…

権利のための闘争

やや混み合った電車の中で、若者が携帯電話でずっと大声で話し続けていた。その若者の肩を掴んで無理やり振り向かせたのは草野仁だった。草野さんは面前した若者の両肩を、厚い両手でがっちり掴んでいる。若者は体を揺すぶって抜けようとするがまるで動かな…

ビフォー/アフター

となりの家が、劇的ビフォーアフターされるのをテレビで見ながら、なんということでしょう、旦那さんが小さなお子さんを抱いて、脱衣場のない風呂へ、遠い居間から裸で向かう映像が流れたのだ。全国の視聴者にとってはある一人の、困った家に住む若い男性、…

グッバイ、ゼア・ハムスター

お掃除を終えて晩ご飯の準備の前に少し、ソファに座って朝から動かし続けた身体をいっときだけ休めると途端に、小腹がすいたのでちょっとしたスナック感覚でハムスターを食べていたら、小学校から帰ってきた娘に見られてしまった。 「ママ、それ、わたしのハ…

ご参考

ほかにもひな祭りを題材にした話をむかし書きました。小さなおひなさまが、大きなひなだんの上で大活躍する、心温まるストーリーです。やはり日本の伝統行事って、すごくいいですよね。 「二人並んですまし顔」id:OjohmbonX:20091125

ダメ。ゼッタイ。

「灯りをつけましょ、ぼんぼりに、って言うでしょ。私、ぼんぼりって何だかよく知らないのよ」 桃の節句に私が何気なくつぶやくと、夫は 「これがぼんぼりだよ」 と次の日に本物を買ってきたのだった。 「ああ、すごいわ。これがぼんぼりなのね。さっそく灯…

松任谷由実

なまはげが サンタクロース 本当は サンタクロース プレゼントを かかえて

その後のトイレの神様

トイレには それはそれはキレイな女神様がいるんやで だから毎日キレイにしたら 女神様みたいにべっぴんさんになれるんやで 私にそう教えた祖母が死んだ。私を育ててくれた祖母。 しかし私が今日もトイレを掃除する理由はむしろ、私の趣味が立ちションだから…

23時のパチンコ屋

パブロフの犬のように飼い馴らされた日本人は「蛍の光」を聞くやいなや帰り始める。しかしジョディは違う。無視して居座り続けている。阿吽の呼吸がわからない。それで店長は「蛍の光」の音量を上げていく。耳が壊れるほどの音にジョディは 「ファーーーック…

見た、見ていない/見えていない、見ない

小学生のときに、地域のおじいさんやおばあさんをエアガンで撃つという授業があった。それは体験学習のひとつで、ちゃんと頑丈なおじいさんやおばあさんが選ばれてるから大丈夫だったのに、僕たちは勘違いして、学校の外でも撃つのが流行った。その辺のおじ…

千の風になって

私はお墓になって あなたに降り注ぐ

高校生たちはお金がないからホテルに行けない

夕方の駅のホームで高校生の男女がキスしてた。ディープキスしてた。完全にサカッてる。女は目を半開きにしてよだれを垂らして一心不乱にぐちゅぐちゅしてる。目の焦点も合っていない。男が腰に回した腕でようやく支えられてる。いいなあと思ってじーっと見…

津軽海峡・冬景色

おいしそうなカモメ煮詰め泣いていました あぁああ〜

家族への限りない祝福

テレビの中でカラオケを歌う女子アナたちを、箸を持つ手も止まったまま、阿呆みたいな顔で熱心に見つめ続ける中学生の息子を、憎しみのこもった目つきで見つめ続ける妻を見て、私は、家族っていいものだな、と思った。 振り向いて私のそでを引く妻に、あなた…

可愛い男、私だけのもの

きこりが斧を泉に落とした。 泉から女神が現れた。 「お前が落としたのは」 「斧! 斧! 普通の斧!」 「普通の斧だが、三重県の県庁所在地は? という問題だった。残念だ」 「大津! 大津!」 どうせ間違ってたから仕方がない。女神は泉に帰っていった。バ…

児童養護施設に

伊達直人を名乗る人物から大量のタイガーマスクが届いた、とかだったら心なごむのになあ。ちびっこがみんなマスクかぶって……ぞろぞろ出てきて……蒸れるわぁ……とっても……

スコスコ

もっと早く楽しんごが石原慎太郎にラブ注入していれば、都政もこんなことにはならなかったのに。

ずるいと思う

広末涼子が結局、キャンドル涼子に改名しなかったのが、すごく腹が立つ。

普及率100%

息子の雪介がめそめそ泣くのを吾郎は 「うちの番だ」 ときつく言い捨てて、背負ったブラウン管テレビの紐をもう一度きつく縛り直し家を出た。奥の山へ捨てるのだ。 昨晩は源治の家だった。次はうちの番なのだ。そして後はない。川に貫かれる谷あいの村は下流…

さようなら母なるヤクザ

生まれて初めて見たものがヤクザだったのでヒナはヤクザを親鳥と認識した。 「こっち見てんじゃねえよ馬鹿野郎」 「ピヨピヨ」 春になりヤクザは30羽の鳥たちを率いて北へと飛び立っていった。

πr2

「はんけい かける はんけい かける さんてん いちよん。はんけい かける はんけい……」 息子がぼんやり外を見ながらずっと口ずさんでいる。テストが近いのかもしれない。妻は買い物に出かけている。日曜の夕方、テレビも電気もついていないリビングを夕日が…

クソの壁

もちろん私は更年期でイライラしてるから、電車の中では人のすねをずーっと蹴りつづけてる。座れなかったときはもっとイライラするから、座ってる人たちの顔に屁をかけてまわってる。 背が高い割にほっそりして、紫色がかった銀縁のメガネをかけたスーツ姿の…

破戒坊主

合コンで住職にお持ち帰りされた。持ち前のサービス精神を発揮して「いくっ、いくっ、成仏しちゃう〜」と(演技で)叫んでたら、急に真顔になって夜通し説法された。なんか釈然としない。

大スキ!

文具屋の店先で、いろんな苗字が彫ってあるたくさんのはんこが納められた回転式のケースの前にしゃがんで、熱心に探してる若い女の人がいた。とてもかわいらしい女の人で、私は見覚えはあったけれど名前が出てこないのだった。 その人に向かってさっそうと、…

小説についてのあれこれ――感動? 短編? 宣言!

序 ここ最近「OjohmbonX」で被ブックマーク数が比較的多かった(5以上だった)2エントリ「赤い糸で、つながる小指」 (id:OjohmbonX:20100907)、「どこの惣菜屋でも起こってる、ありふれた出来事」 (id:OjohmbonX:20101009)についてその物語を要約してみ…