OjohmbonX

創作のブログです。

たっくんはいない(15)

 それで私、ゴルディでおじさんに会って、
「お金を集めたかったけど、三百万円はむずかしいみたい。それで、おじさんに、借りようかなって思って……。」ってゆった。でもおじさんはまたかなしそうな顔して、それはできないよってゆった。おじさんに返す三百万円をおじさんから借りることはできないっておじさんはゆって、でも私はできないってことないと思う、そのシステムはカンペキにうまくいってる気がする。そのシステムができないっていう真実のことは、私よくわからないけど、たぶんおじさんは私よりもシステムのことわかってると思うから私はだまってた。私は、ばかだから……。ケーキを食べておじさんとゴルディを出て、夕方になってまだ暑くて汗が出る。おうちに帰る人たちがいっぱい歩いてたから、ちょっと遠まわりになるけどうら側の道をおじさんと歩いた。お母さんと手をつないで歩いてたちいさい男の子が私のほう指さした。自転車のぼうの部分にまっ赤な風船がむすばれててふわふわしてたの、いま私通りすぎたとこだから、たぶんそれ指さしてる。でも指さしてたのって、ほんとは私の胸の可能性ある。私おっぱい、すごい。ケーバイを取り下げる警察のパワーを、私の胸のパワーがひき出すって可能性はあるのかな。私しってる、ここの道って、男女用のホテルが並んでる……ホテルで二人になって……私の……胸を……私もんだ。胸をもんで、おじさんはどう思うだろうって横見たらぜんぜん知らない人いて私が胸もんでてびっくりしてたから私
「ちがいますよ。」ってゆった。知らない人はすっごい早歩きでどっか行った。おじさんは後ろのほうで自動販売機でなんか買ってた。私そのまま一人で帰った。
 お正月じゃなくて夏だよってびっくりしたけど、弟とおよめさんが急にうちにきて、やっぱり家族ってかけがえがないから会えてうれしい。弟の子どもたちはいなかったからちょっとさみしい。でも元気だって弟はゆったからうれしい。ケーバイは無事におわったって、弟がゆって私そうなんだって思ってほっとした。弟はやっぱり頭がいいからケーバイのこととかわかってる。お嫁さんは空色のキャミに真っ白なロングスカート、肩にはとってもかろやかなストールをかけてて露出をおさえてかわいいけど上品で、うしろのほうでにっこりしてて私もにっこりした。おじさんへの借金は全部ケーバイで返すことができて、あまったお金はお母さんの引っこしに使うよって弟がゆって
「えー。私たち引っ越すんだ。」って私びっくりした。弟は
「姉さんはここにいても大丈夫なんだよ。」ってゆって、やっぱり姉弟っていいなって思った。それでお母さんは今日引っこして弟の家族と住むってこと言われて私またびっくりした。弟は
「母さんのことは大丈夫だから。姉さんは自分のことをまずは大切にして。連絡はしなくても大丈夫だから。」ってゆって私は安心した。私お母さんの背中さわった。あったかくてびっくりした。人間ってあったかいって久しぶりに思った。引っこしの人たちがきてお母さんの荷物はこびはじめた。私じぶんの部屋に戻って探しものした。とっても急いでたから、つみ上げてたものが崩れても気にしない。それで探してたらのんちーの耳でてきた! 探してたのこれじゃないけど私すっごくうれしくなったからリビングの弟のとこいって
「のんちーの耳だよ!」ってゆったけど、弟は見おぼえないみたいな顔した。
「ほらこうやって! こうやって!」って私、思い出すかなーって思ってのんちーの耳で弟をバシバシたたいたけど弟は迷惑そうな顔してお母さんが
「やめなさい。」ってゆって、弟が耳をはらい落とした。床に耳おちて、私じぶんの部屋に戻って探しものした。弟からまえもらった年賀状でてきて、またリビングいって、
「ここ、この仙台のとこに手紙を出せば、お母さんに手紙とどくの?」
「母さんも一緒に住めるようにって、僕ら実は最近引っ越したんだ。だから住所はそことは違うんだけど、新しい住所はよくわからないんだ。」
「そうなの。わからないんだね……。」
 住所がわからないってことは手紙が出せないってことだ。今までお母さんが弟に連絡するかかりだったから、お母さんがいなくなるってことは、もう弟にも連絡がとれないってこと。お母さんとももう会えないんだ。
 私すごくこわくなってきて涙でてきた。
「私こわい……。」
「大丈夫。姉さん、大丈夫だよ。」
 弟がほほえんでる。弟のおよめさんも弟のうしろでほほえんでる。やっぱりやさしいな。でも背中をさすってほしい。からだがみしみしゆってすごくつらいって感じする。足にちから入らない。立ってられない。しゃがんで、床にひざつけて、手で顔おおって私泣いてた。
「姉さん。大丈夫だから。大丈夫。」
 弟やお嫁さんが私泣きおわるまでそばにいてくれた。
 お母さんいなくなってからおうちが広大になって、お母さんの大きい冷蔵庫はコンセント抜いてあって静かにしててこわいから、私じぶんの部屋にだいたいいる。お話しする相手いなくてさみしいから、ちゃお読んだりした。弟がお金をおいていったからそれでごはん買ってる。アジ買ってサンマイオロシしたけど、でもそこから先どうしたらいいかわかんなくてそのままにしてたらアジ変なにおいしだして捨てた。私はお野菜のコーナーやお肉のコーナーの人間じゃないから、お野菜やお肉のことがわからないのは当たり前だけど、お魚のコーナーの人間だからアジとか食べれるって思ってたけど、そうじゃないってことわかった。それでお弁当買ってきてずっと食べてる。不動産やさんがきて出て行ってほしいってゆって
「でも私子どものころからここに住んでます。」ってゆって帰ってもらって、裁判所から紙がきて、それから裁判所の人がきて一ヶ月くらいで出ていかないといけないって、強制しっこうだよってゆわれて
「でも私子どものころからここに住んでます。」ってゆって帰ってもらって八月二〇日にガチャガチャって音して裁判所の人と引っこしみたいな人がうちに入ってきた。
「ここ私のおうちなのになんで入ってきたの!」って怒ったら強制しっこうだよってゆって、そうなんだって思って、必要なものはまとめてください、って言われて、私洗顔して、引っこしの人がお母さんの冷蔵庫運んでって、見た瞬間これって思って買って、でもまだ着るときなかったドレス、まっ赤で、ワインのような深い赤ってお店の人ゆっててほんとそう、ワインって飲んだことない、ラインがほんとにきれいで、試着したとき私ちょっときついかなって思ったけど今きてみたら私の体にぴったりになってた、胸もとと背中が大きくあいててセクシーなのに、肩から腕にかけてぴったり生地が張り付いて、そこから手首にかけては咲きかけのお花みたいにゆったり広がっててエレガント、食器の棚が運ばれてって、ウエストは細くて腰まではぴったりラインを出しててなめらかな素材感、でも足の付け根から先はちりめんの生地になって、やっぱり少しずつ足元にかけて広がっていく、でもやり過ぎになってないって感じの形、上品な形、リビングのテーブルが運ばれてって、ベースメイク、あんまりお外でなかったから、ちょっと肌が美白になってたからファンデも色の白いやつで合わせて、お布団が運ばれていって、チークは血色感が大事だけど、今日は透明感も出していきたい、おさえめのベージュを入れて、上からルーセントパウダーをはたいてぼかして落ちつかせて、私の部屋に積んであったものがどんどん袋につめこまれてく、まゆはマニッシュなのにゴージャス、女のパワーを表現するかんじでひいて、引っこしの人がいすを持って通ってって、手ぶらで戻ってきて、またいすを持って通ってって、まぶたにはグリーンのグラデをうすく入れて、アイラインはブラウンで強くなりすぎないように、でもアクセントに目尻にブルーを少し入れた、ひとめ見てもわからないくらい、でも確実に効果ある、ほとんど分からないくらいでも印象に残るってこと私わかる、遠くでがしゃがしゃ音してる、チークもアイメイクもおさえた分、リップは力強い赤、ドレスの色と親友ってかんじの赤、ラインを濃いめの赤でひいて、内側もグロスとゴールドパウダーたっぷりのゴージャスな赤、ちょっと唇だけういてるかなって気もしたけど、ちょっとはなれて鏡を見るとやっぱりドレスと親友の唇になってて美女、私の冷蔵庫が運ばれていって、あ、さっきの音って私の冷蔵庫からゴミだしてる音だったんだってわかって、かみの毛は伸びてて、色ちがいになってるけど、ヘアケアはおこたってないから、かみの毛のパワーは完全にキープされてる、トップでアップにしてきつめにまとめて、もともと生えてくるときから私のかみの毛パーマになってるから、それを利用して先をちらしてエレガントで華やかなヘアスタイル、大きなアメジストのネックレスもつけて、裁判所の人が
「作業が終わりました。」ってゆって私も
「マックス魅力をカンペキ表現できました。」ってゆった。


(つづく)