OjohmbonX

創作のブログです。

 毎年ハロウィンの夜になるとオバケの(Q太郎の)仮装をした中年男性がやってきて「何らかの菓子を私に寄越しなさい.さもなくば私はあなたに対して(性的な)悪戯をするに違いないのです」と言うので(性的なものに限らずあらゆる)悪戯を厭悪する私は仕方なくたまたまあった生八橋を渡し"Happy Halloween!"と言い続けてきたのですが,今年は生八橋がなかったため,彼に寄越す菓子を私が一切持ち合わせていないこと,しかしそれにより私が彼から(性的な,ないしあらゆる)悪戯をされるのは不当であること,また私はそれを防ぐために可能な限りの行動をすること,さらにその結果彼を死傷させる場合があり得ることを毅然と伝えると,彼は一瞬間小さく身震いし「それでも……私は,あなたに……(性的な)悪戯をせねばならない」と低く搾り出すように言いました.なぜだか私は強い腹立ちを感じて,彼のオバケの(Q太郎の)頭部の仮装を素早く引き剥がすと父.大きく見開かれた目が瞬時に翳り,頽れる父.肩を震わせ,詫び言を呟き続ける,愚かな父! そんな彼にはヴェルタースオリジナル.なぜなら彼もまた特別な存在だからです.

 日本生命のCM.その内容は概ね以下の通り.(ちなみにhttp://www.nissay.co.jp/kojin/present/cm/rain/で視聴できる.)
 女がビルの入り口で雨宿りをしている.ビルから出てきた男が女に近寄り折り畳み傘を手に「駅まで入っていかないか」と言う.男の上司らしき男性が現れ「駅まで入れてくれ」と男に言う.男は「これ使ってください」と上司に傘を渡す.眉を顰める女に男は「違うんだ,実は俺……」と鞄から他の折り畳み傘を取り出す.微笑む女.一つの傘に入り雨中を歓談しながら歩く男と女.ナレーション「ふたつの保障が新しい.生きる力.保険口座の日本生命

 ハロウィンの話を書き終えたときに日本生命のCMに似ていると思った.ハロウィンの女性はヴェルタースオリジナル(キャンデー)をなぜ最初から渡さないのか,CMの男はなぜもう一本の傘を最初から女に渡さないのか.
 それから,CMの男の「違うんだ,実は俺……」とは何が「違う」のか,またこれに続く言葉は何か.
 私が他の傘を持っているにもかかわらず,駅まで入っていけと言ったことに疑問を抱くかもしれませんが「違うんだ,実は俺」はあなたに対して(性的な,あるいはその他の)悪戯をしようと決意しているのであって,(性的な,あるいはその他の)悪戯を円滑に実現させるためのプロセスとして今日ここで一本の傘をあなたと私とで共有,つまり相合傘をしなければならず,ゆえに私は他の傘を持っていることを黙っていました.(ちなみにこの鞄にはさらに15本の傘が格納されています.)
 という意味を女が十全に飲み込んだ上で微笑んでいるのだとしたら,すごい.