OjohmbonX

創作のブログです。

OL同士の会話

「○○社にメールを送信することができないのです」
「『全ての道はローマの休日』というわけですね」
「どういう『わけ』なのですか」
「もちろん,身長182cm体重72.8kg体脂肪率10.2%の24歳男性ローマの行く全ての道沿いの商店が閉店する,という故事に由来する,村八分を意味する諺です」
「私はあなたを大変不愉快に思います.まず,メールが送信できないのを,私が(ネットワークやそれに接続されている機器に? あるいは私の属する会社の社員,送信先の会社の社員,それらに介在する何者かに?)仲間外れにされているからだと愚かしくも推断したこと.それから『全ての道はローマの休日』を当然知らない私を侮るように得々と説明したことを,不愉快に思います.『ローマ』は人ではない」
「ローマは猫でしたわ.少し,言い間違えただけのことを,大袈裟に」
「『身長182cm体重72.8kg体脂肪率10.2%の』雄猫など存在し得ません.馬脚を現しましたね」
「『存在し得ない』なんて世界を知らないあなたを憫笑せずにはいられません」
「そんな戯言を言って私を哀れみ見下げるあなたには思い及ばぬことかもしれませんが,私は,あなたが死んでしまえばいいとさえ思っているのですよ.乾涸びてしまえ! 自分の乾涸びるのを自覚しながらだんだん乾涸びてしまえ,とさえ!」
「私は,乾涸びない.あなたは,私を乾涸びさせられない.なぜならあなたは今から私の愛を知るから.私は私の乾涸び後,つまり私の干物をあなたが食べることさえ厭わない.それどころか幸福に思うわ.そんな愛って,ある? 私が私をあなたに食べさせる愛.私の干物に残存する愛が,私の干物をあなたの口へと運ばせるの.愛が私に存在することを知ったあなたにも,今まさに愛が芽生えているはずでしょう」
「『芽生え』るなんて生温い,ああ,もう,私が愛に満たされた! いいえ,私が愛そのものみたい!」
「そうね,バイク便を頼んでみたら?」
「私の愛を運ぶために? 不可能だわ! 私の愛を運ぶのは愛である私でなければ,駄目.バイク便如きに私の愛,愛である私を運ぶなんて,不可能だわ!」
「メールで送信するつもりだったデータを運ぶために」
「手配しておきます」