OjohmbonX

創作のブログです。

はじめ人間母さん

「守屋君は,そんなによだれを垂らして,どこか体調が良くないのですか」
「うぇーい」
「とりあえず,よだれを止めて,私の質問に答えてください」
「僕は,体調が悪いのではありません.僕は,自主的によだれを垂らしているのです」
「授業中によだれを自主的に垂らしてはいけません.そんなことを,君が分からないはずはないと,私は信じますが」
「うぇーい」
「よだれを,止めなさい! どうして,よりによって今,君はそんなことを……」
「先生の『よりによって今』とは,保護者による授業参観が今行われていることを言っているのですか.僕は,そうであるから,よだれを出している,出さねばならないのです」
「……私には,意味が……」
「これは,よだれであり,また,僕の保護者,母なのです.うぅ」
「よだれと母は通常同一ではあり得ませんが……あ,あ,どうして守屋君は泣いて」
「ううぇええええええーぃ,だって,あんな,ピカチュウ母さんを,授業参観に,呼べるわけ,ないじゃないかあああー」
「ピカ,うぅん,とにかく,落ち着いて,事の訳を説明してください」
「ゑぃ.僕の母は,半年ほど前に『ピカァ』とか『チャー』とかたびたび発するようになって,今では,もう,完全に」
「……」
「だから,僕は,よだれで,ちゃんとした母を作ろうと思って」
「ドテチーン」
「母さん!」
「ドテチーンドテチーンドテチーンドテチーン」
「先生,母が,治りました!」
「そう.では,授業を続けます」