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創作のブログです。

繭を作るのなり

 インターンシップは卒業の要件なり.私は「業務用アプリケーション設計、開発、保守」や「CAD設計 及び 解析」やをしている会社.4日から29日までの正味15日間,大垣のオフィースへ通っている.今は盆休み.
 オフィースのわが席はエアーコンディショナーからの風が真直にあたる.耐え難き寒さなれども,誰も温度を上げず.酷寒.私は口をつぼめて糸を吐く.寒きを忍びかね,繭を作るのなり.砂漠のカンガルーは唾液を腕に塗りつけて暑さをしのぐとのこと.互いに苦労あり.苦労と技術を結集せしめし繭の出来上がりたるころ,女社員の鋭き叫びあり.「絹を裂くよう」とは正にこれなり.びっくりして振り返れば,女社員が繭を指差し,これは何ですかという.これは繭ですと答う.
 女社員によれば,一般に会社において繭を作りしは許されざる由.捨てよという.冷酷なのなり.彼女は繭を捨てる寂しさを知らぬのか知らぬ.繭を作らぬタイプの人と見えたり.繭を捨てる寂しさを知る私のもじもじしたる間に,女社員は繭を解体し始める.胴の太きに比して腕の細く短い女社員の,ちょかちょか動き回りたる様.手際のよきこと.みるみるしぼむわが繭.流涕を禁じ得ず.
 そもそも私をして繭を製作せしめしはお前らの生み出したる寒さにあり,という言葉を呑んで,ゴミ箱へ向かって独りそっと糸を吐くのなり.詮無きことなり.それをも見咎めたれば,長袖を着よという.
 長袖のほうが防寒の効果ありや.