OjohmbonX

創作のブログです。

若く、美しい妻

 風呂上り、寝室に入るとネグリジェ姿の妻が、真っ赤なレースのパンティを頭に被っていた。OKのサインだ。
 その夜、性交した。


 次の日、風呂上り、寝室に入るとネグリジェ姿の妻が、一切装飾性の無いベージュのボーイレッグのショーツを頭に被っていた。積極性はないが、拒まない、というサインだ。
 その夜、性交した。


 それから4日ほど、寝室の妻は頭にナプキンを載せていた。もちろん、生理のサインだ。
 それらの夜、性交しなかった。


 結婚以前の、はじめて妻と夜を共にした夜、「そろそろ、床に就きましょうか」と私が言うと、妻はおもむろに真っ赤なレースのパンティを被って、はにかみながら「はい」と答えた。私は驚愕した。しかし、「なぜパンティを被るのですか」と聞くのは憚られた。何かそういう習慣――就寝時にパンティを被らなければ眠られない、というような――が彼女にあるのだと強いて納得して、あかりを消し、床に就いた。
 私は彼女と性交したくてたまらなかったが、就床直前に被ったパンティに何となく気後れして、まんじりともせず寝返りも打てぬまま3、40分ほどしたところで、彼女は突然ささやくように、言った。
「恥をかかせないでください」
 性交のことだ、と思ったが、動転して思わず「何のことですか」などと言ってしまった。
「『何のこと』? 私は、下着を頭に被っているのですよ……ああ、恥ずかしい」
 え、そっち? 性交じゃないのか、と驚きながら、恥ずかしかったのか、なら、被らなければいいのに、とも思った。それにしても、隣に寝ている女の頭に被った下着の処理法など、私は知らない。「どうしていいのか、わからなくて」と正直に言うと
「あ、……はじめてだったのですね」
とそのまま彼女に導かれるまま、なぜか性交した。徹頭徹尾、彼女は頭のパンティについて触れなかった。(彼女は性交中ずっとパンティを被ったままだった。)
 性交が一通り済んで多少気安くもなったから、彼女に頭のパンティについて訊ねた。
「そんなことも、知らなかったのですか」
と、無知な弟にでも接するような、得意げな調子で彼女は「体を許してもかまわない、というサインですよ」と答えた。
 かつて私が付き合い性交した全ての女は、誰一人としてパンティを被らなかったが、私はあえて黙っていた。


 職場からの帰り道、商店街を歩いていると制服姿の2人組みの女子高校生が「やだー何あれー」とささやき合っていたから、彼女らの視線の先を見てみたら、ショーウィンドーを覗く買い物袋を提げた、頭に真っ赤なレースのパンティを被った妻の後姿が、あった。
「ヨシコーッ!」
 私は叫んだ。妻が振り返る。全力で妻に駆け寄る。「この、ド淫乱がっ!!」そのままのスピードで妻を殴りつける。私のこぶしとショーウィンドーに挟まれてゆがむ妻の顔。夕日にきらめくパンティ。


 帰宅して、詰問する。どうやら、昨夜から被ったままで外すのを忘れていただけらしく、他意はなかったようだ。ことのついでに、頭パンティという慣習の由来をたずねると、高田純次があるテレビ番組で「奥さんがアタマに下着をかぶると『今日はOK』っていうサインらしいんだ」と発言していたからだ、と語った。
高田純次を信じるなんて、馬鹿だなあ」
「うん」
「こいつぅ」
「うふふ」
「あはははは」
「うふふふふふ」
 ちなみに妻は、コケシ体型だ。