ピポーン
「もう一度、タッチして下さい」
俺の前を行く女が改札機に止められた。SuicaかPASMOをタッチし損ねたらしい。愚かな女だ。俺ならそんなヘマはしない。
ピポーン
「もう二度と、タッチしないで下さい」
俺は怒り狂い、腹いせに、改札機の恥ずかしいところをタッチしまくってやった。改札機がおかしくなった。
「も、もう、もも、ピポーンピポーン、ももももう、い、一、度度度度、タタ、」
「お・ね・がーい?」
「タッチ」
「タッチ!」
「「ここにターッチ!」」
「あーなーたーかーらー」
「「ターッチ!!」」
心が通った瞬間だった。
俺は会社に遅刻した。