この本屋さんがすごい！2010年版

　文庫を買った。
「カバーをお掛けしますか」
「ええ、お願いします」
　カウンターの後ろから5人の書店員が現れ、私の脇に立った。
「しばらくそのままでお待ち下さい」
　書店員たちは私に強化プラスチックのスーツを取り付け始めた。
「ちょっと、何なんですか！」
「カバーでございます」
　3分後、「カバー」が私に全て取り付けられた。そしてレジの店員が何かのボタンを押した。本屋の天井と屋根が稼働し、私の頭上に空が現れた。
「お待たせ致しました。またのご来店をお待ちしております」
　店員が別のボタンを押すと、客の足からジェットが噴射され、客は空に向かって店から射出された。客は大気圏を突破し、地球の周回軌道に無事乗った。
　レジの店員は空を見上げて叫んだ。
「お客様ーっ、商品お忘れですよーっ」
　しかし客はその後、店に商品を取りにくることはなかったという。

　当局は現在、サービスと称して客を店から発射し殺害を繰り返している大手書店チェーンについて、捜査中である。