OjohmbonX

創作のブログです。

ブルジョワジーのひそかな愉しみ

 通勤客で混雑した朝の電車で都はるみは「北の宿から」を絶唱していた。マイクから伸びた線は途中で二股に分かれ、老貴夫人の両耳へと続いていた。貴夫人は穏やかに閉じていたまぶたをゆっくりと開き、自分の前に立って歌うはるみを見上げてほほえんだ。
「はるみちゃん、わたし今朝は洋楽を聞きたい気分なの。そうね、マイケルのBeat Itをお願い。ダンスもつけてね」
 これだからブルジョワジーは。


 都はるみiPodじゃない、こう見えても人間だぞ! 大切にしろ!