RTAごんぎつね
カクヨムにとても久しぶりにお話をアップしました↓
新美南吉『ごんぎつね』で、ごんがRTA(最速ゲームクリア)に挑むお話です。
kakuyomu.jp
以下は書いてて思ったことの雑多なメモ。
ゲームのRTA動画を見るのが好きで(自分ではやらない)、RTAの「面白さ」を取り出して適用するみたいなことをしてみようと思った。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は自分でも遊んでいて、RTA動画も見ていて楽しかったので、それを『ごんぎつね』に適用したらどんな感じかと思って。
元のゲームを知らなくても、RTAを見て「なんかすごい」「キャラが変な動きしてる」みたいな面白さはあるけれど、元のゲームを(自分でプレイしたことがあるなど)ある程度知っていると、「普通はこうする」を知っているのでRTAの「ここが普通じゃない」が分かって、そのズレも楽しめる。
最初は「桃太郎」のお話を使ってそこそこの分量まで書いてみたけど、なんかあまり面白くなかったのでやめて「ごんぎつね」にした。
「桃太郎」は、物語と言ってもほとんどプロットなので、自由度が高すぎてRTAの面白さの源泉になるような「ズレ」ができにくいのかもしれない。RTAを見せようとするとそれなりに場面が具体的になっていないといけないので、「桃太郎」でやろうとするとそこを勝手に作っていく(自分で埋めていく)ことになる。けれど、そこは何せ「勝手に作った部分」で読む側と事前に了解が取れているものではないので、そこからズレを作っても、あんまし楽しくないのかも。
それで「もう少し具体的に描かれたお話」で、かつ「ある程度みんながプレイしたことのある(読んだことのある)お話」ということで、「ごんぎつね」にしてみたら、自分でも楽しかったので良かった。(書く作業そのものは全然楽しくはない。)あと「ごんぎつね」のお話自体が好きだったし。
RTAの面白さにもいくつか考えられて
- ゲームのキャラや事象が、現実離れしてムチャクチャでおかしい
- 目的(クリアタイム短縮)のために「本来のプレイ/ストーリー/キャラ」を逸脱して不条理でおかしい
- バグを利用した技・グリッチの原理が面白い
- プレーヤーが難しいプレイをものすごい水準でこなしていくのに感嘆する
とか色々ある。
3つ目の「バグ技の原理が面白い」、4つ目の「その原理を生身の人間が現実にやってのけるのがすごい」もRTA動画を見る楽しみの一つだけど、それには解説が必要になる。
もとの『ごんぎつね』のお話はすごくコンパクトで(小学4年生が国語の教科書で全文を読むくらいなので)、その手際のよさが好きなお話だけど、RTAの解説を入れ始めていくとその嬉しさがどんどんなくなってしまう。RTAのその3つ目、4つ目の楽しさをそこそこ感じつつ、あんまり冗長にならないように、というバランスを取った方が良いのだと感じた。それで本当はいろいろ書いていたけど、削ったりした。改めてもとの作品を読むと、多くない分量で、直接的にストーリーには奉仕しない景色や音の描写がすっと書き込まれていて、やっぱりきれいだなと思った。
あと解説を入れるのは、もうごんの視点ではないのだけれど、もとの『ごんぎつね』自体、「これは、わたしが小さいときに、村の茂兵というおじいさんからきいたお話です。」で始まるように、ほぼごんの視点で固定されているけれど、必ずしもそうというわけでもないので、まあいっか、という感じであまり気にしていない。考えれば考えただけ、突き詰めていくポイントはあるけど、それをやり始めると(そもそも書く作業自体は楽しくないので)嫌になってくるので、もう「だいたい」でやることにしてる。
『ごんぎつね』の中にRTAのお話を組み込んでいく作業なので、ある程度は文体の統一感があってほしいという気持ちもあるので、それなりにぱっと見の字面・文体は合わせようとはしている。しかし書きまわしなり場面なり「新美南吉はこうは書かない」とはっきり思ってもこっちの好き嫌いとの兼ね合いもあるので、これも「気にしつつほどほどに合わせている」みたいな感じでやった。
『ごんぎつね』は悲しい/やるせないラストが魅力的なお話だけど、せっかくだからそうじゃない方向で終わりにする方が楽しいかと思ってそうした。