OjohmbonX

創作のブログです。

Z戦士を超えて

「ところで先生、虫歯を治してもらったついでにお聞きしますけれど、やっぱりおっぱいのことです。おっぱいって、Zカップの向こう側はどうなってるんでしょうか」
「超Zカップはその自重に耐え切れずにブラックホール化します」
 歯科医の話を聞いた彼はその夜、うなされることとなった。
「やめてー。来ないでー。おっぱい来ないでー。吸いこまれるよー」
 あまりに苦しげな様に驚いた彼の妻が彼を起こした。彼はしばらくぼんやりした後、出し抜けに妻を抱きしめて言った。
「ああ、Aカップだ。よかったー」
 妻は思った。「来るのか? Aカップの時代が、ついに来るのか?」しかしついに、何も来なかった。

友だちは、一生の宝ものです。

 一人暮らしの俺をたずねてアパートへ遊びに来た友人が帰りしな、俺の知らぬ間に玄関のドアへ「冷やし中華 はじめました」という貼り紙を貼っていった。10月初旬なのに。
「やってる?」
「やってねえよ!」
 チャイムも鳴らさずいきなりドアを開けて入ってきた見知らぬおっさんに驚いて思わずそう答えたけれど、やってるって何を? とドキドキしていた俺に全く構う様子もなくおっさんは、勝手に俺んちの食卓についた。
「またまたぁ。やってるくせに。冷やし中華、ちょうだいよ」
「おめえに食わせる冷やし中華は、ねえ!」
 おっさんは悲しげな瞳で俺を見据えた。
「じゃあ、ラーメン」
 俺は恐怖した。このおっさん、イカれてやがる。きっと何か食うまで帰らないつもりだ。俺はインスタントラーメン「出前一丁」を一袋取り出して、調理した。もちろん早く帰って欲しかったから3分煮るべきところを30秒で済ませて鍋のまま箸すら添えずに具のなく麺の非常に固いラーメンをおっさんの前に出した。おっさんは(手で)食った。食いながら、滂沱として流れる涙をぬぐいもしなかった。
「すごくうめえよ。なんだか、『出前一丁』の味がするなあ。ああ、懐かしい味だよ」
「600円です」
「お金ない」
「じゃあ働いて返してよ」


 おっさんとの華麗な連携で店を切り盛りする俺を見て友人は「やっぱりな」と言った。そして許可なくアパートの一室で中華料理屋を営業したため食品衛生法違反により処分を受けたおっさんと俺を見て友人は「やっぱりな」と言った。