2009-12-15 ブルジョワジーのひそかな愉しみ 通勤客で混雑した朝の電車で都はるみは「北の宿から」を絶唱していた。マイクから伸びた線は途中で二股に分かれ、老貴夫人の両耳へと続いていた。貴夫人は穏やかに閉じていたまぶたをゆっくりと開き、自分の前に立って歌うはるみを見上げてほほえんだ。 「はるみちゃん、わたし今朝は洋楽を聞きたい気分なの。そうね、マイケルのBeat Itをお願い。ダンスもつけてね」 これだからブルジョワジーは。 都はるみはiPodじゃない、こう見えても人間だぞ! 大切にしろ!