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OjohmbonX

創作のブログです。

てりまる

 夕方の混雑したマクドナルドの店内で女子高校生2人がおしゃべりしている。
「あんたさあ、さんまとしのぶを足して二で割ったみたいじゃない?」
「それって私がイマルに似てるってこと? うれしい!」
「違う。出っ歯のくせにらくらくホン使ってるからだよ」
「ひどーい」
 そこにたまたまイマルが通りかかった。イマルは「どこにでもいるタイプの女の子」として流通しているが実際、どこにでもいるのだ。それでマックにもいる。イマルは彼女を見てポロポロ涙をこぼした。イマルは自分でも意外だったが、本当はやはり、父親と母親にはいっしょにいて欲しいと願っていたのだ。
 出っ歯でらくらくホンユーザーの女子高校生は立ち上がってイマルにゆっくり歩み寄り、そして、イマルを抱きしめた。ちょうどメガてりやきを食べていたところだったので、彼女の手はてりやきソースでべたべたになっていた。それで抱きしめたからイマルは、てりやきマックイマルになった。イマルは女子高校生の肩に顔をうずめて泣きじゃくった。その頭を彼女は撫でている。イマルがどんどんてりやき化していく。
 高校生はてりやきを抱き起こして、その顔をじっと見つめた。私たちの娘。彼女もまた涙をこぼしていた。なぜなら憧れていたイマルを目の前にして夢のような喜びが彼女を突き上げるから。この互いに憧れ合っていた二つの存在が出会う奇跡を目の当たりにした友人は、ポテトを、とりわけ長いポテトを一本手に取り、二つの顔の間に、両端を二つの唇に置いた。するとシュレッダーみたいに二つの口は自動的にポテトをかじり始め、二つの顔は少しずつ近寄っていった。そして、ああ、唇が触れる、ふれるわ、その瞬間、高校生の前歯が、あまりに出過ぎているんだもの、このチャーミングで急ぎ過ぎている前歯が、てりやきの歯に当たって、軽い痛みに二人は一気に顔を引き離した。そしてかすかな驚きの後、二人は大笑いした。笑い合って、さざなみが引いて、ニュートラルな表情に戻った二人は、しばらく無言で見つめ合った後、ダムが崩れるように突然、キスをむさぼり始めた。
 友人は、自分のケータイと友人のらくらくホンでその光景を撮りまくっていた。


 そこへ男の店員があわてて駆け寄り、
「店内での性行為や撮影行為はおやめください」
と注意した。彼女たちは、撮影行為はともかく、自分たちが性行為をしているとはこれっぽっちも思っていなかったのに、そうして言葉で名指しされれば急に思い出したみたいに、お互いの手を服の中へ滑り込ませて、胸や下腹部を直に触れ始めて、本格的な性行為へと移行し始めた。
 完全に癒着しているように思えるこの二人の、どこからが高校生で、どこからがイマルなのか確信は持てなかったものの、ともかく店員は二人の間に割って入ってなんとか引きはがした。
 引きはがされて、女の子の楽園を終焉させた重犯罪人の顔を、怒りを込めて彼女たちが見て驚いたのはこの店員、めっちゃさんまに似てる。友人がふるえる手でおそるおそるらくらくホンを店員の手に持たせてみたら、イマルはこの新しい両親に抱き着いた。
 女子高校生の方もいいかげんてりやきマックに飽きていたし、らくらくホンをやめてiPhoneにキャリアごと乗り換えようと思っていたので、もうどうでもよかった。
 店を出た女子高校生たちは、風の中を去っていった。