OjohmbonX

創作のブログです。

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 ちょうど10年前の話。
 中学生だった娘にたまごっちを買ってきてくれとせがまれたので「たまごっちだよー」と言ってゆで卵(むいたやつ)を渡した。「これ白いやつじゃん! 超レアなんだよー、どうやって手に入れたの、お父さんすごい! 熱っちゃー!!」ゆでたての尋常じゃない熱さのたまごっちを素手で持つのに耐えられなかったらしく、娘はたまごっちを放り投げた。たまごっちは床に衝突して崩れ、黄身が見えてしまった。「お父さん、ごめん、私……」「大丈夫だから、お風呂に入ってきなさい」娘が風呂に入っている間に冷蔵庫から卵を取り出し、茹で、殻をむき、氷水で冷やしておいた。そしてそれを、風呂上りの娘に渡した。「たまごっちだよー」「これ白いやつじゃん! しかも熱くない!」
 その翌日から、娘の話題はたまごっちがほとんどを占めるようになった。「今日、学校で自慢しちゃったー」「とうとうくちぱっちになったよ」「授業中にやってたら先生に見つかって取り上げられたーマジむかつく」「てか何回やってもくちぱっちにしかならないんだけど」……さすがに私も不安になったが、世間のたまごっちブームが冷めるのと歩調をあわせるように、娘のたまごっちの話題も減っていき、私もいつしか思い出すこともなくなっていた。


 そんな娘も、とうとう結婚することになった。
 披露宴で、娘がいきなり「ゆで卵じゃねえかーっ!!」と叫びながら私の口にあつあつのゆで卵を突っ込んだ。誰もが、「たしかに、ゆで卵だが……」とあっけに取られた。長期的ノリツッコミのつもりなのだろうが、面白くないので、罰として孫を茹でるという報復ボケを計画中だ。