金メダルの輝きをもう一度
スポーツ番組の収録中なのに、荒川静香はイナバウアーがしたくてしたくて、うずうずしていた。
ああもう野球とかサッカーとかどうでもいいじゃん。みんなは私のイナバウアーを見たいに決まってるんだし、私はイナバウアーがしたいに決まってるんだから、とにかく私にイナバウアーをやらせるべきじゃん。この糞夜中に視聴率とりたかったらイナバウアーっきゃないだろ。馬鹿だな。
「イナバ」
お?
「稲葉の調子がここのところうなぎ登りですからね」
掛布、このハゲ。まぎらわしい。一瞬反応しちゃっただろ。罪滅ぼしに視聴者に向かって詫びながら毛を自らむしれ。
「イナ」
!
「イナモト! クーゥッ! き た ん で す! クーゥッ! クーゥッ!」
カビラ。お前は罰として一生スグリの顔を見続けろ。健やかなる時も病める時もスグリの顔を見続けろ。
「それでは続きましてフィギュアスケートです。荒川さんお願いします」
「イナバウアー!」
「え、荒川さん、何を、あの、浅田選手の特集を」
「そんなことより! イナバウアー!」
「あらか」
「みなさんいっしょに! イナバウアー!」