読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

OjohmbonX

創作のブログです。

6000度の愛

 昨夜、のりしろ(id:norishiro7)さんと食事しました。
 二人でせんだみつおゲームをしました。もともと俺はせんだみつおゲームが好きで、よく一人でやってるんですが、この楽しさを知ってもらおうと思って一緒にやったらやっぱりすごく盛り上がりました。もともとせんだみつおゲームって一人でやるゲームじゃないからね。
おれ「せんだ」
のり「みつお」
ふたり「ナハナハ!」
おれ「キャァーッ」
のり「うふふふ」


おれ「せんだ」
のり「みつお」
ふたり「ナハナハ!」
おれ「キャハーッ」
のり「あはは」
おれ「おれ、今とってもたのしい……」
のり「そうだね。そうだね。たのしいね」


 そして俺は折りをみて、ついに核心にふれました。
おれ「そろそろ、円高の話をしようか」
のり「いいけど、でも、ここじゃちょっとはずかしい……」
おれ「とりあえず、店、出ようぜ」
のり「うん」
 二人は店を出て夜の街を歩きました。いつの間にかビルからもれる光の色が白から淡く紫がかったピンクに変わってゆきます。そして二人が足を止めた目の前には紛れも無いラブ・ホテル。部屋の写真が並んだパネルのボタンを押し、エントランスを抜けて奥へ進もうとしたところでカウンターから声をかけられました。
「男同士では入れません」
 声の主は、下卑た笑いを隠そうともしないカウンターのババアでした。
おれ「俺達は別にいかがわしいことをするわけじゃないんだ。この『休憩コース:3時間:6000円』を利用して休憩するだけだ」
ババア「フン、休憩するだけで6000円も払う馬鹿がいるかい。休憩したけりゃ100円マックに行きな」
おれ「そんな、そっちが『休憩コース』だなんて名付けておいて、建前も何もあったもんじゃない」
 俺がやりきれない怒りを感じていると何かまぶしくて、横を見るとのりしろさんが白く光り輝いていました。ほとんど目を開けていられない輝きでした。これは怒り、なのか……? しかしのりしろさんはほほ笑んでいます。
ババア「おぉ、おおぉ……」
 ババアは恐れおののいていました。
 けれど俺には恐怖はありませんでした。知人男性が突然発光し始めたのに怖さも驚きもなく、ただ疑問があるだけでした。どうやって光っているのだろう? 蛍光? どこかから励起光を受けて蛍光を発しているのか。でも特定の波長じゃなくてこんなに可視光を幅広く含んで白いなんて。だったら輻射? けれど普通の人体は赤外域しか出さないはずで、こんな白い可視光を出すには太陽に近い温度が必要なのだから、彼は、彼の表面は、6000度! しかも、ああ、このほほ笑み、全てを許して受け入れる愛、6000度の愛。
 触れればはっきりするのに、触れてはならない、触れてはならないと声が鳴る。焼け死ぬのが怖いんじゃない。禁忌なんだ。人にやすやすと触れてはならない、物語がそう要求する倫理。
 そうして呆然と立ち尽くしていると、やがてのりしろさんはゆっくり発光するのをやめました。ババアはムキになって恐怖の裏返しの焦りや恥ずかしさを隠そうともせず怒り狂いました。
ババア「店の中で勝手に光って、許さない、絶対許さないよ、警察呼ぶからね」
おれ「もういいよ、行こう」
 俺はのりしろさんの手をとって駆け出しました。店を出て、街を走りながら、いま手を握ってることに気づきました。
 あったかい。あったかいなあ。人間って、あったかいんだ。当たり前のことにびっくりしてのりしろさんの顔を振り返ってみると、にっこりほほ笑んでくれました。
 それで一行目以外ぜんぶ嘘です。ほんとは、もっと、すごかったです。